照明計画と木目|光の当て方で杢は立つ
2026.10.30
同じ一枚板が、照明によってまったく別の材に見える。
これは誇張ではありません。木材店の倉庫で見た印象と、完成した店で見た印象が違う。この落差は、多くの場合照明計画から生まれます。
この記事では、熊本で九州各地の銘木を扱う木六竹八が、木と光の関係を整理します。

杢は「光の反射」でできている
まず原理から。
杢(もく)とは、木の繊維がねじれたりうねったりして育ったときに現れる、装飾的な模様です。
なぜ模様として見えるのか。それは、繊維の向きが場所によって違うため、光の反射の仕方が変わるからです。
つまり、
- 杢は色の違いではなく、反射の違い
- したがって、光の当たり方が変われば、見え方も変わる
- 真上から均一に照らすと、杢は消える
ここが決定的です。杢のある材を選んだのに、照明計画で殺してしまうということが、実際に起こります。
杢を立てる|斜めから当てる
杢を最大限に見せたいなら、光を斜めから入れてください。
- 天板に対して、浅い角度で光が当たる位置に器具を置く
- 真上からの直射は、杢を平板に見せる
- 一方向から当てるほど、陰影が強く出る
カウンターであれば、客席側から、あるいは壁側から斜めに落とす配置が効きます。
見学時に確認する
杢は写真では伝わりません。そして、明るい倉庫で見た印象も当てになりません。
弊社での見学時に、照度を落とした状態や、一方向からスポットを当てた状態でご覧いただくことができます。
設置予定場所の照明条件(器具の位置、色温度)をお知らせいただければ、それに近い条件で確認できます。

色温度が木の色を決める
照明の色温度(ケルビン)によって、木の見え方は大きく変わります。
| 色温度の目安 | 呼び方 | 木への影響 |
|---|---|---|
| 2700K前後 | 電球色 | 赤み・黄みが強く出る。飴色が深く見える |
| 3000〜3500K | 温白色 | 自然な暖かみ。汎用的 |
| 4000K前後 | 白色 | 木の色が落ち着いて見える |
| 5000K以上 | 昼白色 | 木が白っぽく、冷たく見える |
業態別の傾向
- バー、料亭、高級店:2700K前後。木の赤みを引き出し、落ち着きをつくる
- 日本料理、寿司:3000〜3500K。料理の色を正確に見せつつ、木の温かみも残す
- カフェ、明るい店:3000〜4000K
- 昼白色(5000K以上)は、木の魅力を最も殺します。和の空間ではまず選びません
材を選ぶときは、使う色温度を決めてから見てください。順序が逆だと、想定と違う色になります。
演色性(Ra)も確認する
色温度と並んで重要なのが演色性です。
演色性とは、その光の下で、物の色がどれだけ自然に見えるかを示す指標です。Ra100が基準(自然光相当)で、数値が低いほど色が不自然になります。
- Ra80台:一般的な照明
- Ra90以上:色を正確に見せたい場所に推奨
飲食店では、料理の色にも直結します。演色性の低い照明の下では、マグロが茶色く見え、野菜がくすんで見えます。
木の色も同様です。せっかくの飴色が、安っぽく見えてしまう。
店舗、とくに料理を出す場では、Ra90以上を推奨します。

小口を光らせる
一枚板ならではの見せ方です。
小口(こぐち)とは、天板を横から見たときの断面。厚みと年輪が見える面です。
- カウンターの下部に間接照明を仕込み、小口を照らす
- 厚みが際立ち、板としての存在感が出る
- 耳のうねりに沿って光が走る
厚みのある一枚板を使うなら、この手法は検討に値します。上からの光だけでは、小口は影になって見えません。
反射とグレアに注意
光沢のある仕上げでは、照明が天板に映り込みます。
- 客の目線に光源が映ると、まぶしい
- 料理を上から撮ったときに、テカリが写る
- 木目が反射で見えなくなる
対策
- ツヤ消し(マット)仕上げを選ぶ
- 光源の位置を、客の視線に映り込まない位置にする
- 拡散型の器具を使う
バーのように、あえて艶を出して光を反射させる設計もあります。これは意匠としての判断です。ただし、料理を主役にする店では、ツヤ消しが無難です。
時間帯で変わる店
昼と夜で営業形態が変わる店では、両方の条件で確認してください。
- 昼:自然光が入る。窓の位置と方角
- 夜:人工照明のみ
自然光は色温度が高く(5000K以上)、木が白っぽく見えます。夜の電球色では赤く見える。同じ材が、時間帯で別物になります。
調光・調色機能のある器具を使い、時間帯で切り替えるという選択もあります。
経年変化と照明
長期的な視点も付け加えます。
木は紫外線で色が変わります。照明が強く当たる部分だけ、色の変化が早く進むことがあります。
- 一部にだけスポットを強く当て続けると、その部分だけ色が変わる
- 窓からの直射日光も同様
均一に光が回る設計にしておくと、色の変化も均一に進みます。ここは、意匠と長期の見え方のトレードオフです。
設計時に決めること
- 色温度(2700K/3000K/3500K など)
- 演色性(Ra90以上を推奨)
- 器具の位置と配光角(斜光で杢を立てるか)
- 小口を照らすか
- 仕上げの艶(映り込みとの関係)
- 時間帯による調光・調色の要否
これらを決めてから材を見る。逆の順序だと、選んだ材が活きません。
まとめ
- 杢は色ではなく反射。真上からの均一な光では消える
- 斜めから当てると杢が立つ
- 色温度で木の色は激変する。2700Kは赤く、5000Kは白く見せる
- 演色性Ra90以上を推奨。料理の色にも効く
- 小口を間接照明で照らすと厚みが際立つ
- 映り込み対策にはツヤ消し。バーでは艶ありも選択肢
- 昼夜で条件が変わる店は両方で確認する
- 照明計画を決めてから材を見る
照明条件をお知らせいただければ、それに合う材をご提案します。見学時に照度を落として確認していただくこともできます。
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