耐水・耐熱の考え方|水場と熱源のそばで木を使う
2026.11.03
飲食店の天板には、水がこぼれ、熱い器が置かれます。
「塗装してあるから大丈夫」。この理解は、半分正しく、半分危険です。
この記事では、熊本で九州各地の銘木を扱う木六竹八が、耐水性・耐熱性の限界を整理します。

塗膜がしていること
ウレタン塗装は、木の表面に連続した膜を作ります。
- 水分が木に染み込むのを防ぐ
- 汚れが木に入るのを防ぐ
- 摩耗から木を守る
重要なのは「連続している」ことです。膜が切れている場所からは、水が入ります。
弱点1|木口
最大の弱点は、木口(こぐち)です。
木口とは、繊維を切断した断面。短辺の面や、開口の内周がこれにあたります。
木口は、水分がもっとも早く出入りする場所です。ストローの断面を想像してください。繊維方向に開いた導管が露出しています。
さらに、木口は塗料を吸い込みやすく、塗膜が薄くなりがちです。
だから
- 木口は塗装を多めに重ねる
- 開口(シンク、配線孔)の内周は、特に念入りに
- 発注時に「小口も塗装する」ことを明記する
弱点2|傷
塗膜に深い傷が入ると、そこから水が入ります。
- 表面からは見えにくい
- 内部で水が滞留する
- 気づいたときには変色や腐朽が進んでいる
だから
- 定期的に塗膜の状態を点検する
- 深い傷は早めに補修する
- 研磨剤入りクリーナーやメラミンスポンジを使わない(塗膜を削ります)

弱点3|継続的な濡れ
一時的にこぼれるのと、毎日繰り返し濡れるのとでは、まったく話が違います。
塗膜は水を弾きますが、完全に遮断するわけではありません。長時間、繰り返し濡れる環境では、少しずつ水分が入ります。
だから
- シンク周囲は別素材にするのが第一の推奨
- 水がかかる範囲には木を使わない
- こぼれたらすぐ拭く運用にする
熱の限界
塗膜は熱に弱い
ウレタン塗膜は、一定以上の温度で白濁・変色します。
熱い鍋、やかん、土鍋、鉄板。直接置けば、跡が残ります。
「塗装してあるから熱に強い」というのは誤解です。塗膜はむしろ、無塗装の木より熱に弱い面があります。
だから
- 鍋敷き・受け台の運用は必須
- スタッフ全員に周知する
- 業態によっては、熱い器を置く位置だけ別素材にする
輻射熱
直接置かなくても、近くに熱源があるだけで影響します。
- 局所的に乾燥が進む
- 木が縮み、割れや反りが生じる
- 塗膜が劣化する
うなぎ屋の焼き場、天ぷらの揚げ場、鉄板。これらの対策は、距離・縁取り・断熱・排気の4点です。

最も厳しいのは「複合条件」
水と熱が同時に来る環境が、木にとって最悪です。
- 天ぷら店:油の飛散+輻射熱+蒸気
- 鉄板焼き:熱+水(清掃)+油
- 厨房まわり:熱+蒸気+洗浄
乾く/湿るを繰り返す環境では、木は常に動き続けます。これが割れと反りを招きます。
だから
これらの環境では、
- 木を使う範囲を限定する
- 熱源・水場の周囲は別素材にする
- 天板下の通気を確保し、上下差を作らない
- 確実な排気を設計する
「木を使う場所を限定することで、木の良さは損なわずにリスクを下げられます。」これは妥協ではなく、素材の適材適所です。
樹種による差
塗装をすれば差は小さくなりますが、まったくないわけではありません。
- 栗:タンニンを多く含み、水湿に強い。枕木や土台に使われてきた
- ヒバ:抗菌性が高く、水回りに使われてきた
- ヒノキ:風呂に使われてきた耐水性
- ケヤキ:木肌が緻密。熱と油の環境に相対的に強い
一方、やわらかく色の淡い樹種(杉、桐)は、水と熱の環境では扱いが難しくなります。
点検の習慣
年に一度、次を確認してください。
- 塗膜の白濁、剥がれ、傷
- 木口・開口周囲の状態
- 水がかかる範囲の変色、膨れ
- シーリングの劣化
- 木部が柔らかくなっていないか(腐朽のサイン)
早期に見つければ、部分補修で済みます。そして一枚板は、厚みが許すかぎり削り直して仕上げ直せます。
設計時のチェックリスト
- 水がかかる範囲を図面上で特定したか
- その範囲を別素材にできないか検討したか
- 熱源からの離隔距離は確保したか(機器仕様を確認)
- 小口と裏面の塗装を指定したか
- 天板下の通気は確保したか
- 排気計画は十分か
- 鍋敷き・受け台の運用ルールを決めたか
まとめ
- 塗膜は連続している限り水と汚れを防ぐ
- 弱点は木口・傷・継続的な濡れ
- 小口は塗装を多めに重ねる。発注時に明記する
- 塗膜は熱に弱い。鍋敷き・受け台は必須
- 最も厳しいのは水と熱の複合条件
- 水場・熱源の周囲は別素材にするのが第一の推奨
- 年に一度の点検と、削り直しという最終手段
水まわり・熱源まわりの設計について、木材の側からご相談に応じます。図面をお送りください。
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