業務用途の塗装仕様|ウレタンをどう指定するか
2026.11.03
「ウレタン仕上げでお願いします」
この一言だけでは、仕上がりは決まりません。艶の度合い、導管の埋め方、塗り回数。これらが変われば、見た目も手触りも別物になります。
この記事では、熊本で九州各地の銘木を扱う木六竹八が、塗装を指定するときの言葉を整理します。

なぜ業務用途はウレタンなのか
まず前提から。
店舗では、ツヤ消しのウレタン仕上げを推奨しています。理由は運用の現実です。
| 項目 | オイル仕上げ | ウレタン仕上げ |
|---|---|---|
| 水・油・汚れ | 弱い | 強い |
| 輪染み | なりやすい | なりにくい |
| 日常の手入れ | 乾拭き中心。水気厳禁 | 拭くだけ |
| 定期メンテ | 年1〜2回の塗り直し | 基本的に不要 |
| 傷の部分補修 | できる | 難しい |
| 手触り | 木そのもの | 塗膜の感触 |
オイル仕上げは質感で勝りますが、年1〜2回の塗り直しと輪染み対策を、営業しながら徹底するのは現実的ではありません。
例外は寿司店の白木など、伝統と美意識が優先される場合です。
指定項目1|艶(グロス)
最も印象を左右する指定です。
塗装の艶は、光沢度という数値で表されます。慣用的には次のように呼ばれます。
| 呼び方 | 印象 | 向く場面 |
|---|---|---|
| 全艶消し(マット) | 塗ってあることを感じさせない | 和の設え、料理を主役にする場 |
| 3分艶 | ごく控えめな艶 | 日本料理、寿司、落ち着いた店 |
| 5分艶(半艶) | 適度な艶 | 汎用。カフェ、物販 |
| 7分艶 | はっきりした艶 | バー、都会的な空間 |
| 鏡面(グロス) | 強い反射 | 特殊な意匠 |
推奨
料理を出す店では、全艶消しから3分艶を推奨します。
理由は、
- 照明が映り込まない
- 料理を上から撮ったときにテカリが写らない
- 木目が素直に見える
客が撮った写真がそのまま広告になる時代において、映り込みは実利の問題です。
一方、バーやラウンジでは艶ありも有力です。間接照明を反射し、カウンターのラインが光る。意匠としての判断になります。

指定項目2|導管の埋め方
見落とされやすい、しかし手触りを決定づける指定です。
オープンポア仕上げ
導管(木の管)を埋めずに仕上げる方法です。
- 木肌の凹凸が残る
- 触ったときに木の質感がある
- 木目がはっきり見える
- 汚れが導管に入りやすい(塗膜はあるので実用上は問題になりにくい)
クローズドポア仕上げ
目止め材で導管を埋め、平滑に仕上げる方法です。
- 表面がつるりと平滑になる
- 清掃しやすい
- 塗膜が厚くなり、木肌感は薄れる
- 高級家具的な仕上がり
どちらを選ぶか
ケヤキやクリのような環孔材は、導管が大きく目立ちます。
- 木の表情を残したい → オープンポア
- 平滑さと清掃性を優先 → クローズドポア
飲食店では、清掃性からクローズドポア寄りを選ぶことが多くなります。ただし、木肌感は確実に減ります。ここはトレードオフです。
指定項目3|塗り回数と膜厚
塗装は、一度塗って終わりではありません。
- 下塗り(シーラー・目止め)
- 中塗り
- 上塗り
回数が増えるほど塗膜は厚く、耐久性が上がります。ただし、厚いほど木肌感は失われます。
業務用途では、耐久性を優先して回数を確保するのが基本です。
指定項目4|塗料の種類
ウレタン塗料には、大きく二種類あります。
| 種類 | 特徴 |
|---|---|
| 2液型ウレタン | 硬化剤を混ぜて使う。硬度・耐薬品性が高い。業務用途向き |
| 1液型ウレタン | 扱いが簡単。性能は2液型に劣る傾向 |
店舗では2液型を推奨します。アルコールや洗剤への耐性が求められるためです。
具体的な製品の選定は、塗装業者・施工者にご相談ください。

知っておくべき制約
補修が難しい
ウレタン塗膜に深い傷が入った場合、部分補修は困難です。
オイル仕上げなら傷んだ箇所だけサンドペーパーをかけてオイルを入れ直せますが、ウレタンは全面の再塗装になることが多い。
これはウレタンの最大の弱点です。承知のうえで選んでください。
塗膜には寿命がある
紫外線、摩耗、薬剤。塗膜は永久ではありません。
- 数年〜十数年で劣化が見えてくることがあります
- 劣化したら再塗装
- 一枚板なら、削り直してから塗り直すことができます
これが突板との決定的な違いです。表層0.2〜0.6mmでは、削り直せません。
熱には限界がある
塗膜があっても、熱い鍋や器を直接置けば白濁・変色します。
鍋敷きと受け台の運用は、塗装の種類にかかわらず必須です。
発注時に書くこと
見積依頼・仕様書には、最低限これを書いてください。
- 塗料の種類(2液型ウレタン など)
- 艶の度合い(全艶消し/3分艶 など)
- 導管の処理(オープンポア/クローズドポア)
- 塗り回数
- 塗装範囲(表面のみか、小口・裏面も含むか)
- 色(クリア/着色の有無)
5番を忘れない
裏面と小口も塗るかは、必ず指定してください。
- 小口は水分の出入りが最も激しい部分。塗らないと弱点になります
- 裏面を塗ると、上下で水分の出入りの条件が揃い、反りのリスクが下がります
収納で天板下を囲う場合、床暖房の上で使う場合は、裏面の塗装は必須とお考えください。
サンプルで確認する
艶や導管の処理は、言葉では伝わりません。
- 同じ樹種で、異なる艶のサンプルを作ってもらう
- 実際の照明条件で見る
- 触って質感を確認する
塗装後は戻せません。サンプルでの確認を、工程に組み込んでください。
まとめ
- 業務用途はツヤ消しウレタンが基本。例外は白木
- 艶は全艶消し〜3分艶を推奨(映り込み対策)
- オープンポアは木肌感、クローズドポアは清掃性
- 2液型ウレタンを推奨
- ウレタンは部分補修が難しい。承知のうえで選ぶ
- 塗膜には寿命がある。削り直して塗り直せるのが一枚板の強み
- 小口と裏面を塗るかを必ず指定する
- サンプルで確認してから決める
塗装仕様のご相談を承っています。ご要望をお知らせいただければ、材に適した仕様をご提案します。
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