杉・桧を店舗に|和の空気と、傷の許容
2026.11.02
店舗の樹種選定で、私たちは硬さを基準にすることを推奨しています。
その基準で言えば、杉やヒノキは推奨されない樹種です。軟らかく、傷が入るから。
それでも、これらの樹種でなければ出せない空気があります。この記事では、熊本で九州各地の銘木を扱う木六竹八が、正直に整理します。

なぜ杉・桧を選ぶのか
和の空気は、代えがたい
日本の建築は、杉と桧でできてきました。社寺、数寄屋、茶室、住宅。日本人が「和」と感じる空気の多くは、この二つの樹種が作っています。
ケヤキは力強いが、和の静けさとは少し違う。クスノキは大らかだが、緊張感は出ない。
張り詰めた静けさを出したいなら、杉か桧です。
肌ざわりがやわらかい
針葉樹は密度が低く、熱を奪いにくい。冬に触れても冷たさを感じにくく、手や肘を置いたときの当たりがやさしい。
カウンターに長く座る業態では、これは体感として明確に伝わります。
香り
ヒノキの清冽な香り、杉のやわらかく甘みのある香り。空間の記憶に直結します。
軽い
搬入・設置の負担が小さい。旅館の客室のように、スタッフが動かす家具では実務上の利点になります。

しかし、傷は入ります
ここは曖昧にしません。
- 硬い食器を置けば跡が残る
- 皿を滑らせれば擦り傷が入る
- 爪でも跡がつくことがある
- 店舗の使用頻度では、1年で見た目が変わります
杉の気乾比重は0.4前後、ヒノキは0.4〜0.45程度。ケヤキ(0.6〜0.7)の6〜7割程度です。
選ぶなら、方針を先に決める
中途半端が最も不幸です。次のどちらかを、最初に決めてください。
方針A|傷を味として受け入れる
- 白木、またはオイル仕上げ
- 使った年月が表情になるという前提で運用する
- 数年に一度、削り直して仕上げ直す
- 削り直しを見込んだ厚みを確保しておく
この方針を取るなら、削り直しの運用と予算を、開業時点で計画に入れてください。後から「思ったより傷む」と言っても、選択の結果です。
方針B|ウレタンで保護する
- ツヤ消しのウレタン仕上げ
- 凹みは防げませんが、擦り傷と汚れは大幅に減る
- 日常の手入れは拭くだけ
- 質感は多少犠牲になる
正直に言えば、塗膜を張ると杉・桧の「素の肌ざわり」は損なわれます。それでも、業務用途では現実的な解です。
第三の解|古木を選ぶ
ここが、私たちがご提案したい選択肢です。
杉や桧も、樹齢を重ねると別物になります。
現代の林業では、杉の伐期は50年前後。しかし、
- 厳しい環境でゆっくり育った木
- 何百年も立ち続けた木
これらは、年輪が細かく詰まります。
針葉樹の場合、年輪が詰まっているほど密度が高くなる傾向があります。木がゆっくり成長すると、細胞壁の薄い早材の幅が狭くなり、細胞壁の厚い晩材の割合が相対的に高くなるためです。
建材としての杉と、樹齢数百年の古杉は、同じ樹種とは思えないほど違います。
弊社の取り扱い
- 八代・坂本村の古杉(樹齢1400年の杉を含む。伐採後30年の自然乾燥)
- 大分県産・樹齢300年の杢杉
- あさぎり町のヒノキ(樹齢百数十年)
これらは、若い植林材とはまったく異なる密度と落ち着きを持っています。和の空気を出しつつ、耐久性も確保するという要求に、最も近い答えです。

使い分けるという設計
もう一つの現実解を挙げます。
手が触れる場所と、目で見る場所を分ける。
- 客が肘を置き、皿を置く面 → ケヤキなど硬い樹種
- 背面の棚、見せる面、腰壁 → 杉・桧
こうすれば、和の空気は出しつつ、耐久性が必要な部分は守れます。
あるいは、
- カウンター天板 → ケヤキ
- 座敷の座卓、個室のテーブル → 杉・桧(使用頻度が低い)
使用頻度で樹種を分けるという考え方です。
業態別の判断
| 業態 | 杉・桧の適性 |
|---|---|
| 寿司(白木カウンター) | 伝統的に桧。削り直し運用が前提 |
| 天ぷら | 桧の白木も多い。運用次第 |
| 料亭・茶室 | 適する。格と空気が合う |
| 旅館の客室 | 適する。使用頻度が低く、軽さも利点 |
| 蕎麦・カフェ(高回転) | 慎重に。ウレタン必須 |
| うなぎ・焼き物 | 推奨しない。油煙で色が入りやすい |
| バー | 色が淡く、低照度で沈む。要検討 |
まとめ
- 杉・桧でなければ出せない和の空気がある
- しかし店舗では確実に傷が入る
- 方針を先に決める。味として受け入れるか、ウレタンで守るか
- 第三の解は古木を選ぶこと。年輪が詰まり、別物の密度になる
- 手が触れる場所と見る場所で樹種を分けるのも有効
- 使用頻度で判断する。料亭・客室は適し、高回転店は慎重に
- うなぎ・焼き物では推奨しない
杉・桧の古木についてのご相談を承っています。樹齢と乾燥年数を含めてご案内できます。
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