楠の幅を活かす|継ぎ目のない大判カウンター
2026.11.02
「奥行80cm、長さ3mのカウンターを、一枚で通したい」
こうしたご要望に対して、まず候補に挙がるのがクスノキ(楠)です。
理由は明快です。幅が取れる樹種が、そもそも少ないからです。
この記事では、熊本で九州各地の銘木を扱う木六竹八が、店舗での楠の使い方を整理します。

幅は、丸太の太さで決まる
一枚板の幅は、元の丸太の直径で頭打ちになります。
さらに、天板用の材は芯を外して挽く(心去り)のが望ましい。芯を含む材は乾燥時に放射状の割れが入りやすいためです。
つまり、幅80cmの心去り材を取るには、それよりはるかに太い丸太が必要になります。
そこまで太る樹種は、多くありません。
| 樹種 | 幅の取りやすさ |
|---|---|
| クスノキ | 取りやすい |
| 紅椨(ベニタブ) | 取りやすい |
| 杉(古木) | 取りやすい |
| ケヤキ | 中程度 |
| 栗 | 中程度 |
| 桑・椿・朴・桜 | 取りにくい |
クスノキは、日本で最大級の巨木に育つ樹種です。各地の神社にご神木として立っている姿を見たことがある方も多いと思います。
継ぎ目がないという価値
幅方向に継げば、寸法は確保できます。しかしそれは幅はぎ材であり、一枚板ではありません。
店舗において、継ぎ目がないことの意味は、
- 木目が端から端まで連続する
- 手が触れたときに、継ぎ目の段差や目地がない
- 清掃時に、目地に汚れが溜まらない
- 「一枚である」と説明できる
最後の点は、接客において実際に効きます。「この幅で、継ぎ目がないんです」という一言が、素材への注目を生みます。

楠の性質
硬さは中程度
気乾比重は0.5前後。ケヤキ(0.6〜0.7)より軟らかく、杉(0.4前後)より硬い。ちょうど中間です。
店舗で使う場合、
- 硬い食器を強く置けば、跡が残ることがあります
- ツヤ消しのウレタン仕上げで保護することを推奨します
- 回転率の極端に高い業態では、ケヤキのほうが安心です
木目が大らかにうねる
幹が太く育つ過程で繊維がねじれ、それがそのまま模様になります。ケヤキのような直線的な力強さとは対照的な、大らかで動きのある表情です。
熊本産の材には、この動きが特に強く出た杢楠(もくすす)と呼ばれるものがあります。
幅の広い面に、うねる木目が広がる。これは大判ならではの見せ方です。
加工性がよい
極端に硬くないため、刃物やサンダーがよく通ります。仕上がりの表情が豊かに出ます。
樟脳の香り|業態で判断が分かれる
楠を店舗で使う際、最も重要な検討事項です。
クスノキは樟脳(カンフル)の成分を含みます。削ると、清涼感のある独特の香りが立ちます。
向く場所
- ロビー、ラウンジ、フロントカウンター
- バー(料理の香りから離れている)
- 待合、エントランス
- 物販店のディスプレイ台
料理から離れた場所では、この香りは大きな魅力になります。「木の香りがする空間」は、記憶に残ります。
慎重に判断すべき場所
- 寿司、日本料理、割烹のカウンター
- 香りを大切にする料理を出す場
繊細な香りを扱う業態では、樟脳の香りが競合する可能性があります。
実際のところ
- 香りの強さには個体差があります
- 時間とともに穏やかになります
- ウレタン塗装をすると、香りは大きく抑えられます
必ず実物で確認してください。弊社での見学時に、実際に香りを確かめていただけます。料理長・板長の方に同行いただくことをおすすめします。

幅の広い材ならではの注意点
木の動きが大きい
幅が広いほど、湿度変化にともなう伸縮の絶対量が大きくなります。
一般的な広葉樹では、含水率が1%変化すると板目方向の寸法は0.2〜0.3%程度変化するとされます。
| 幅 | 季節変動の目安(含水率5%想定) |
|---|---|
| 60cm | 6〜9mm |
| 80cm | 8〜12mm |
| 90cm | 9〜13mm |
幅90cmなら、1cm以上動くことがあります。
したがって、
- 十分に乾燥した材を選ぶ(乾燥年数を必ず確認)
- 固定は長穴・駒止めで伸縮を逃がす
- 壁との取り合いに隙間を確保する
重量が増える
奥行90cm×長さ4m×厚8cmの楠で、約140〜150kg。搬入に4人以上が必要です。
搬入経路
幅が広いほど、搬入は難しくなります。曲がり角、エレベーター、扉の開口。図面段階で実測してください。
弊社の取り扱い
- 霧島神宮周辺のシマ楠(樹齢500年)
- 熊本産の杢楠(複数の寸法)
樹齢500年のシマ楠は、霧島の土地を支えてきた木です。美しい色合いと独特の木目を持ち、耐久性にも優れた材です。
産地と樹齢を語れることは、店舗にとって価値になります。
まとめ
- 幅の広い一枚板は、大径木になる樹種でなければ取れない
- クスノキは日本最大級の巨木になる。幅が取りやすい
- 継ぎ目がないことは、意匠・清掃・説明の三面で価値がある
- 硬さは中程度。ツヤ消しウレタンでの保護を推奨
- 樟脳の香りは、料理から離れた場所では魅力、香りを扱う業態では要検討
- 幅が広いほど木の動きと重量が増す
- 必ず実物で香りを確認する
幅の広いカウンターのご相談を承っています。必要寸法と業態をお知らせください。
あわせて読みたい:楠(クスノキ)の一枚板|香りと大径木ならではの幅広天板