白木仕上げの実際|美しさと手入れの現実
2026.11.02
白木のカウンターは、美しい。
しかし、「白木にする」という決定は、店の運用そのものを決める決定でもあります。
この記事では、熊本で九州各地の銘木を扱う木六竹八が、白木を維持するとは具体的に何をすることなのかを、正直に整理します。

白木とは何か
塗装をしていない、木肌そのままの状態を指します。
塗膜がないため、
- 木の色と手触りが直接出る
- 水も油も汚れも、そのまま吸い込む
扱いの難しさと引き換えに、木の純度を取る。それが白木という選択です。
なぜ白木が選ばれてきたのか
清潔さを可視化する
白木は汚れれば必ず目に見えます。ごまかしがききません。
汚れが隠せないということは、清潔であることが証明されるということでもあります。客席から見て白木が白いままであるという事実そのものが、その店の仕事を語ります。
料理を邪魔しない
艶のある塗膜は光を反射し、器や魚の見え方を変えます。白い木肌は、ネタの色を最も素直に見せます。
余計な要素を入れない
繊細な香りを扱う場で、塗装という要素を加えない。この考え方があります。
日常の手入れ|具体的に何をするか
営業後、必ず
- 乾いた柔らかい布で、全面を拭く
- 汚れがあれば、固く絞った布で拭く
- 必ず乾いた布で水気を取る
水気を残さない。これが最重要です。
営業中
- こぼれたらすぐ拭く
- 醤油、酢、油、魚の脂を放置しない
- アルコールを直接かけない
やってはいけないこと
- 研磨剤入りクリーナー、メラミンスポンジ(表面を荒らします)
- 漂白剤(色が抜けます)
- 重曹・アルカリ性洗剤(タンニンを含む樹種は黒ずみます)
- 濡れたまま放置する

削り直しという前提
ここが、白木を選べるかどうかの分かれ目です。
どれだけ丁寧に扱っても、白木は時間とともに色が入り、染みができます。
そのため、定期的に表面を削って白さを戻すことが前提になります。
頻度
使い方、客数、拭き上げの徹底度によって変わりますが、
- 数年に一度という店
- 毎年という店
いずれもあります。「何年で削るか」を、開業前に想定しておいてください。
削り直しに必要なこと
- カウンターを使えない期間が発生する(通常は数日)
- 職人の手配が必要
- 費用がかかる
- 粉塵が出る(現場作業の場合)
つまり、休業日または営業時間外に作業できる体制が必要です。
厚みを見込んでおく
削るたびに厚みは減ります。一回で1〜3mm程度。
- 毎年削るなら、10年で1〜3cm
- 将来の削り直しを見込んだ厚みで発注してください
「ぎりぎりの厚みで白木」は、数年後に選択肢を失います。
白木が向く条件
正直に整理すると、次の条件が揃う店です。
- スタッフが毎日拭き上げる体制がある
- 定期休業日がある(または営業時間外に作業できる)
- 削り直しの費用を予算化できる
- 白木であること自体が、店の価値として機能する
- 客も白木の意味を理解している業態
寿司、天ぷら、割烹。伝統的にこれらの業態で白木が使われてきたのは、この条件が揃いやすいからです。
白木が向かない条件
- 人手が限られ、閉店後の作業時間が取れない
- 年中無休、または休業日を作れない
- スタッフの入れ替わりが激しく、手入れの質が安定しない
- 客がこぼすことが前提の業態(居酒屋、カフェなど)
この場合、白木は数年で「汚れた木」になります。美しさは、維持されてはじめて美しさです。

代替案|白木に近い見た目をつくる
運用が難しい場合、次の選択肢があります。
ツヤ消しのウレタン仕上げ
- 白木にかなり近い見た目をつくれる(必ずツヤ消しを指定)
- 水・油・汚れに強い
- 日常は拭くだけ
- 削り直しによる補修は難しくなる
見た目を優先し、運用の負担を下げる。現実的な解です。
薄い保護塗装
木肌の質感を残しつつ、最低限の保護を与える仕上げもあります。白木とウレタンの中間です。
使い分ける
- 付け台(料理を置く部分)だけ白木
- 客席側はウレタン仕上げ
用途に応じて仕上げを変えるのは、合理的な設計です。
「白木に見えること」と「白木であること」
最後に、判断の軸を示します。
これは、どちらが正しいという話ではありません。
- 白木であること自体に意味を見出すなら、運用体制を整えて白木を選ぶ
- 客に伝わる見た目が目的なら、ツヤ消しウレタンで十分
私たちは、どちらのご要望にも対応します。ただ、選ぶ前に現実を知っておいていただきたい。それがこの記事の趣旨です。
まとめ
- 白木は塗装をしない仕上げ。水も汚れもそのまま吸う
- 日常は拭き上げ+水気を残さない
- 定期的な削り直しが前提。年1回〜数年に1回
- 削り直しには休業・職人・費用が必要
- 将来の削り直しを見込んだ厚みを確保する
- 向くのは手入れ体制と休業日がある店
- 代替案はツヤ消しウレタン、薄い保護塗装、部分的な使い分け
- 「白木に見えること」と「白木であること」は別
白木をご検討の際は、運用体制を含めてご相談ください。現実的な選択肢をご提案します。
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