客席の足元寸法|幕板と膝まわりの設計
2026.10.30
カウンターの座り心地を決めているのは、天板ではなく足元です。
天板がどれほど美しくても、膝が当たれば長く座れません。そして足元は、完成してから直すのが最も難しい部分でもあります。
この記事では、熊本で九州各地の銘木を扱う木六竹八が、足元寸法の考え方を整理します。

膝が入る有効高さ
最も基本的な寸法です。
天板の下面から床まで、あるいは幕板の下端までの高さが、膝の入る空間になります。
| 座り方 | 必要な有効高さ |
|---|---|
| 一般の椅子座 | 60cm以上 |
| ゆとりを持たせる | 65cm以上 |
| 車椅子対応 | 65cm以上(奥行45cm以上、幅75cm以上) |
60cmを下回ると、多くの方が窮屈さを感じます。
天板の厚みが効く
ここで、一枚板特有の事情があります。
有効高さ = 天板上面の高さ − 天板の厚み
天板上面を72cmに設定した場合、
| 天板の厚み | 有効高さ |
|---|---|
| 3cm | 69cm |
| 5cm | 67cm |
| 7cm | 65cm |
| 9cm | 63cm |
厚い天板は迫力が出ますが、その分だけ膝の空間を圧迫します。厚み9cmの天板を72cmで据えると、有効高さは63cm。ぎりぎりです。
厚みを増すなら、天板上面の高さも上げるという判断が必要になります。ただし、上げれば椅子との差尺が変わります。
厚み・高さ・差尺・有効高さは、連動して決まります。一つだけ変えることはできません。

膝が入る奥行
高さだけでなく、奥行も必要です。
膝から先が入る空間がなければ、体を天板に近づけられません。
| 座り方 | 必要な奥行 |
|---|---|
| 浅く座る | 30cm程度 |
| 一般的 | 40cm以上 |
| ゆとり | 45cm以上 |
幕板や支持構造が、この空間に入り込んでいないかを確認してください。
幕板の扱い
幕板(天板の下に回す板)は、たわみを抑えるうえで有効です。しかし、客席側では膝を阻害します。
客席側に幕板を回さない
もっとも素直な解です。たわみは厚みと支持位置で解決します。
幕板を上げる
天板の直下ではなく、少し奥に引っ込めた位置に設ける。膝の前面を避けられます。
幕板の高さを抑える
幅の狭い幕板にする。ただし、たわみ抑制の効果も下がります。
内側だけに設ける
客席側には出さず、スタッフ側にだけ幕板を回す。実務的にはこれが多い解です。
脚・支持の位置
支持が膝の位置に来ると、座れない席が生まれます。
- 客席1人あたりの幅(55〜65cm)を割り付ける
- その区切りの位置に支持を置く
- 席の中央に脚が来ないようにする
席割りと支持位置を、同時に決めてください。天板の寸法だけ先に決めると、後から脚の位置が破綻します。

ハイカウンターのフットレスト
スツールを使うハイカウンターでは、足を置く場所が必須です。
足がぶら下がったままだと、数分で疲れます。
2つの方式
| 方式 | 内容 |
|---|---|
| スツール側 | スツールにフットレストが付いている |
| カウンター側 | カウンター下部に横木・パイプを設ける |
高さの目安
床から20〜25cm程度の位置に設けることが多くなります。スツールの座面高から逆算してください。
座面高70cmのスツールなら、座面から45〜50cm下。この位置に足が置けると、膝が自然な角度になります。
カウンター側に設ける場合
- 客席の全長にわたって連続させる
- 清掃しやすい形状にする(靴が当たり、汚れます)
- 金属やタイルなど、傷みにくい素材を検討する
一枚板の天板を守る意味でも、足が当たる部分は別素材にしておくのが賢明です。
車椅子への配慮
誰もが使える席をつくる場合の目安です。
| 項目 | 目安 |
|---|---|
| 天板上面 | 70〜75cm |
| 有効高さ | 65cm以上 |
| 有効奥行 | 45cm以上 |
| 有効幅 | 75cm以上 |
重要なのは、この範囲に支持構造や幕板が入らないことです。高さだけ合っていても、脚が中央にあれば使えません。
カウンターの端部に1席分、この条件を満たす区画を設けるという設計が現実的です。
なお、要求水準は法令・条例および建築物の条件によります。具体的な適合判断は設計者および所轄の窓口にご確認ください。
完成前に確認する
足元は、図面では見落とされやすく、完成後には直せません。
仮組みして、実際に座ってください。
- 検討中の高さで天板を仮設する
- 実際の椅子を置く
- 座って、膝を入れてみる
- 体格の異なる複数人で試す
- 数分間、その姿勢を保ってみる
「一瞬座って問題ない」と「30分座って疲れない」は違います。
まとめ
- 有効高さは椅子座で60cm以上。厚い天板は空間を圧迫する
- 厚み・高さ・差尺・有効高さは連動する
- 膝の入る奥行は40cm以上
- 幕板は客席側に出さないか、奥に引っ込める
- 席割りと支持位置を同時に決める
- ハイカウンターにはフットレスト(床から20〜25cm)が必須
- 車椅子対応は有効高さ65cm・奥行45cm・幅75cmが目安
- 仮組みして、実際に座って確認する
寸法の組み合わせについて、木材の側からご相談に応じます。天板の厚みと高さの関係でお困りの際はお知らせください。
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