カウンター内側の設計|スタッフ動線と作業側の寸法
2026.10.29
カウンターの設計は、客側だけでは完結しません。
内側に立つのは、毎日何時間もそこで働く人です。ここの寸法を誤ると、作業効率が落ち、腰を痛め、結果として店が続きません。
この記事では、熊本で九州各地の銘木を扱う木六竹八が、カウンター内側の設計と、そこから決まる天板の条件を整理します。

作業高さの基本
立って作業する場合の適正高さには、目安があります。
身長 ÷ 2 + 5cm 程度が、立ち作業の高さとして使いやすいとされます。
| 主に立つ人の身長 | 作業高さの目安 |
|---|---|
| 155cm | 82〜83cm |
| 160cm | 85cm |
| 165cm | 87〜88cm |
| 170cm | 90cm |
| 175cm | 92〜93cm |
誰が主に立つのかを先に決めてください。オーナーシェフの店なら、その人の身長で決めるのが正解です。複数人が交代で立つなら、平均的な高さにするか、足元にスノコを置いて調整します。
低すぎると腰を痛める
作業高さが低いと、前かがみの姿勢が続きます。数年単位で腰に効いてきます。
「なんとなく低め」で設計されたカウンターは多いのですが、ここは真剣に詰めるべき寸法です。
客側との高低差
カウンター店の設計思想が、ここに現れます。
同面(フラット)にする
- 客と同じ高さで作業する
- 距離が近く、会話が生まれやすい
- 手元がすべて見える
- 作業高さが客席の高さに引きずられる(作業しにくくなることがある)
内側を下げる(床レベルで調整)
- 内側の床を一段下げ、客席との目線を合わせる
- 作業高さは適正に保ちつつ、客との目線が合う
- 寿司店で古くから用いられてきた手法
- 排水や段差の処理が必要
内側を上げる/立ち上がりを設ける
- 客から手元を隠す
- 完成した料理だけが現れる演出
- 作業領域を客の視線から切り離せる
どれを選ぶかで、天板の高さと形状が変わります。設計の初期に決めてください。

通路幅
内側の通路幅は、作業効率に直結します。
| 条件 | 必要な幅の目安 |
|---|---|
| 1人が作業する | 60〜75cm |
| 1人が作業+もう1人が通り抜ける | 90〜120cm |
| 2人が並んで作業する | 120cm以上 |
狭すぎると、すれ違いのたびに作業が止まります。逆に広すぎると、移動距離が増えて疲れます。
何人が同時に立つかを、席数とオペレーションから決めてください。
収納をどう取るか
カウンター内側は、収納の宝庫です。
- 器、グラス、カトラリー
- 調味料、備品
- レジ、伝票
- 冷蔵設備
天板下に収納を設ける場合の注意
ここで、木の天板特有の問題があります。
天板の下を密閉すると、上下で乾き方が変わり、反りが出ます。
天板の上面は室内に開放され、下面が収納で閉じられている。この状態が続くと、上下で含水率に差が生まれます。
対策
- 収納の背面や側面に通気の経路を設ける
- 完全な密閉を避ける
- 天板の裏面も仕上げる(塗装する)ことで、水分の出入りの条件を上下で揃える
「天板の上下・表裏で環境の差を作らない」。これは木材を扱ううえでの原則です。

足元の設計
立ち仕事では、足元が疲労を左右します。
蹴込み(トウキック)
足先が入る欠き込みです。カウンター下部の前面を、奥に引っ込める。
- 高さ:10cm前後
- 奥行:8〜10cm程度
これがないと、立ったときにつま先が当たり、体が前傾できません。地味ですが、一日中立つ人には大きな差です。
床材
長時間立つ場所には、クッション性のある床材や、疲労軽減マットを検討してください。木の天板とは直接関係しませんが、働く人の健康に関わります。
水と熱から天板を守る
内側は、水と熱の発生源です。
- シンク周囲は別素材にするか、確実な防水処理を
- 熱源からの離隔を確保する
- 水はねの範囲を想定し、その部分は木を避ける
客側は一枚板、内側は別素材という割り切りは、実務的に非常に合理的です。客が見て触れる面に木を使い、作業側は洗浄しやすい素材にする。
これは費用の面でも有利です。一枚板の幅を抑えられます。
内側から決まる天板の条件
ここまでを踏まえると、天板に求められる条件が見えてきます。
- 奥行:客側の作業領域+内側の作業領域(または内側は別素材)
- 高さ:客側と内側のどちらを優先するか、床レベルで調整するか
- 厚み:支持位置と、収納との干渉から決まる
- 裏面の仕上げ:収納で囲う場合は、裏も塗装する
- 開口:シンク、機器、配線
これらが決まってから、材の寸法を確定してください。
まとめ
- 作業高さは身長÷2+5cmが目安。誰が立つかを先に決める
- 客側との高低差は同面/床を下げる/立ち上がりの三択。設計思想が出る
- 通路幅は1人60〜75cm、すれ違い90〜120cm
- 天板下を密閉しない。通気を確保し、裏面も仕上げる
- 蹴込み(トウキック)を必ず設ける
- 客側は一枚板、内側は別素材という割り切りは合理的
- 内側の設計が決まってから、天板の寸法を確定する
内側の構成を含めたご相談を承っています。オペレーションと人数をお知らせいただければ、天板として必要な寸法をご提案します。
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