割烹のカウンター寸法|付け台と客席の設計
2026.10.21
割烹のカウンターは、料理人と客が向き合う設計です。
料理を作り、渡し、言葉を交わす。この一連の所作が成立する寸法でなければ、どれほど良い材を使っても機能しません。
この記事では、熊本で九州各地の銘木を扱う木六竹八が、割烹カウンターの寸法の考え方と、そこから導かれる材の条件を整理します。

寸法は「所作」から決まる
図面から決めるのではなく、実際の動きから決める。これが割烹カウンターの原則です。
- 料理人がどこに立つか
- どこで盛り付け、どこで渡すか
- 客はどこに手を置き、どこに器を置くか
- 酒器、おしぼり、箸置きはどこに納まるか
この動きを、実寸で再現してから寸法を確定してください。段ボールや角材で仮組みするだけでも、図面では見えなかった問題が出ます。
基本寸法の目安
| 項目 | 目安 | 備考 |
|---|---|---|
| 客席1人あたりの幅 | 55〜65cm | 高単価店ほど広めに |
| 客側の天板奥行 | 35〜45cm | 器の数で変わる |
| カウンター全体の奥行 | 60〜90cm | 付け台を含むか否かで変動 |
| カウンター高さ | 椅子座面高+差尺25〜30cm | 一般に70〜75cm前後 |
| 天板の厚み | 5cm以上 | 長尺ほど厚みが要る |
付け台という要素
割烹・寿司に特有なのが付け台(つけだい)です。料理人が料理を置き、客が受け取る台のこと。
配置の考え方
- カウンターと同面:一体の天板で通す。すっきりするが、客の私物と料理の領域が混ざりやすい
- 一段高くする:料理が主役として立つ。客側の作業領域と分離できる
- 一段低くする:料理人の手元が見えやすい
幅
付け台の幅は20〜30cm程度が一つの目安です。器の大きさと、出す料理の点数から決めます。
素材を変えるという選択
付け台だけ樹種や仕上げを変える店もあります。
- 客席側はケヤキのウレタン仕上げ(耐久性)
- 付け台はヒノキの白木(清潔さ)
一枚板ですべてを通すのが常に正解ではありません。用途に応じた使い分けは、合理的な設計です。

板場との高低差
客から板場の手元をどこまで見せるか。これが割烹の設計思想そのものです。
見せる場合
- カウンターと板場の床に高低差をつけない、または板場をやや下げる
- 立ち上がりを設けない
- 客は調理の全過程を見る。ライブ感が出る
隠す場合
- 客側に立ち上がり(腰壁)を設ける
- 板場の床を下げる
- 完成した料理だけが現れる。演出性が高まる
一枚板の天板は、この立ち上がりとの取り合いが納まりの要点になります。天板と立ち上がりを一体にするか、別物として納めるか、設計段階で決めてください。
木の動きを納まりに織り込む
これは必ず設計に入れてください。
木は湿度で幅方向に伸び縮みします。一般的な広葉樹では、含水率が1%変化すると板目方向の寸法は0.2〜0.3%程度変化するとされます。幅60cmの天板なら、含水率1%あたり1.2〜1.8mm程度。季節で数mm動くことは珍しくありません。
したがって、
- 天板を下地にガチガチに固定しない。長穴・駒止めなど伸縮を逃がす金物を使う
- 壁との取り合いに隙間を見込む(シーリングまたは見切り材で処理)
- 長さ方向は固定してよいが、幅方向には必ず遊びを持たせる
固定してしまうと、木の力の逃げ場がなくなり、割れの原因になります。
一枚板で押さえるべき条件
割烹カウンターに一枚板を使う場合、材に求められる条件は厳しくなります。
長さ
席数×1人あたり幅+端部の余裕。10席なら6m前後になることもあります。
弊社の取り扱いは最長4m程度です。それを超える場合は、複数枚を並べるか、継ぐという判断になります。継ぎ目の位置を、客席の区切りと合わせる設計にすると自然に納まります。
幅(奥行)
客側の奥行だけでも35〜45cm。付け台を含めて一枚で通すなら60cm以上が必要です。
一枚板は耳のうねりで幅が一定ではありません。最小幅で成立するかを必ず確認してください。
節・割れの位置
客が手を置く位置、器を置く位置に大きな節穴があると実用上支障が出ます。カット位置を調整して外すという手当てが可能です。

材の手配タイミング
長尺・幅広・節が少ない。この三条件が揃う材は、そう多くありません。
図面が固まってから探すのでは間に合わないことがあります。席数と概略寸法が見えた段階でご相談ください。図面確定前でも構いません。
樹種と仕上げ
業務用途としての判断が優先されます。
- 樹種:硬く傷に強いケヤキ、クリ。幅が必要ならクスノキ
- 仕上げ:ツヤ消しのウレタン。器の見え方を邪魔せず、水・油・熱に耐える
- 付け台のみ白木という使い分けも有効
まとめ
- 寸法は所作から決める。実寸で仮組みする
- 客席幅55〜65cm、客側奥行35〜45cm、高さは座面高+差尺25〜30cm
- 付け台は幅20〜30cm。素材を変える選択もある
- 板場を見せるか隠すかが設計思想。立ち上がりとの取り合いが要点
- 木の幅方向の伸縮を必ず納まりに織り込む
- 長尺・幅広・節少は希少。材は早く押さえる
割烹カウンターのご相談を承っています。席数・板場との関係・オープン予定日をお知らせください。図面前のご相談も歓迎です。
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