内装予算の配分|どこに集中投下すべきか
2026.11.06
内装予算は、常に足りません。
すべてを理想どおりにはできない。どこに使い、どこを削るか。この判断が、店の印象を決めます。
この記事では、熊本で九州各地の銘木を扱う木六竹八が、素材への投資という観点から配分の考え方を整理します。

原則|視線と接触の多い順に投資する
配分の基本は、単純です。
客が長く見る場所、長く触れる場所に、予算を集中させる。
接触時間で並べると
| 場所 | 接触の度合い |
|---|---|
| カウンター天板・テーブル天板 | 触れ続ける。視界に入り続ける |
| 椅子 | 座り続ける |
| 入口・エントランス | 一瞬だが、第一印象を決める |
| レジ・会計まわり | 必ず立ち止まる |
| 壁(目線の高さ) | 見えるが、触れない |
| 天井 | ほとんど意識されない |
| 床 | 触れない(靴を履いている) |
天板が最上位です。理由は明快で、食事のあいだずっと、手と視界の中にあるからです。
天板に集中投下する理由
1. 接触時間が最長
1〜2時間の滞在中、手が触れ続けているのは天板だけです。
2. 写真に必ず写る
料理を撮れば、天板が背景になります。その写真がSNSに流れます。
既製品のメラミン天板と、一枚板。写真の質がまったく違います。
3. 劣化しにくい
天井や壁のクロスは、数年で劣化が目立ちます。一枚板は逆に、経年で色が深まります。
さらに、傷んでも削り直して仕上げ直せます。一回の削り直しで減る厚みは1〜3mm程度。厚み50mmなら計算上は十数回。
「使い捨てにならない場所」に投資するのが、長期的には合理的です。
4. 退去時に持ち出せる
独立した家具として設計すれば、原状回復で撤去する対象になりません。移転しても、削り直して再利用できます。
壁や天井への投資は、退去時にゼロになります。

削ってよい場所
逆に、優先度を下げてよい場所です。
天井
ほとんど意識されません。照明計画のほうが、はるかに効きます。
床
靴を履いているため、素材の質は伝わりません。清掃しやすさと安全性を優先してください。
見えない壁面
厨房内、バックヤード、客の視界に入らない壁。機能で選んでください。
高い位置の壁面
目線より上は、意識されにくい。目線の高さに予算を寄せるほうが効きます。
部分使いという戦略
全席を一枚板にする必要はありません。予算の集中投下が現実的です。
優先順位の例
- カウンター(接触時間が最長、写真に写る)
- 入口正面・レジまわり(必ず視界に入る)
- 窓際の一席、または大テーブル(象徴的な一点)
- その他の席
弊社の取り扱いには15万円台の材もあります。小ぶりな天板や棚板、レジ台であれば、この価格帯で成立します。
「あの席がいい」を作る
全席を同じにする必要はありません。
一席だけ一枚板にする。すると、その席への指名が生まれます。
- 予約時に「カウンターでお願いします」
- 「あの奥の席、空いてますか」
席に差をつけることが、単価と回転の設計になります。

削ってはいけない場所
予算を削ると、後で高くつく場所があります。
1. 下地・構造
見えない部分ですが、やり直しが最も高くつきます。
- 壁の下地補強
- 天板の支持構造
- 床の補強
とくに、天板の支持が不足していると、たわみます。後から支持を追加するのは、内装を壊すことになります。
2. 排気・空調
- 油煙が客席に流れる
- 空調の風が天板に直撃する
これらは後から変えられません。そして、内装材の寿命を直接縮めます。
3. 照明
素材の見え方は、照明で決まります。
高い材を入れても、演色性の低い照明の下では安っぽく見えます。Ra90以上を推奨しているのは、このためです。
材と照明はセットで考えてください。
4. 搬入経路の検討
ここをケチると、材が入らないという最悪の事態になります。
優先順位の考え方
限られた予算で最大の効果を出すには、こう考えます。
- 構造・設備(下地、排気、空調)は削らない
- 照明に適正な予算を確保する
- 天板に集中投下する
- 壁は目線の高さに寄せる
- 天井・床・見えない部分は機能優先
「年あたり」で考える
最後に、視点を一つ。
初期費用だけで比べると、一枚板は高い。しかし、使える年数で割ってみてください。
- 一般的な内装材:5〜10年で更新。撤去費用も発生
- 一枚板:20〜30年以上。削り直して再生。退去時は持ち出せる
50万円を25年で割れば、年2万円です。しかも25年後に価値が残る。
「安い=得」とは限らないということは、押さえておく価値があります。
まとめ
- 配分の原則は「視線と接触の多い順」
- 天板が最上位。接触時間・写真・経年・持ち出し可能性の4点で
- 削ってよいのは天井・床・見えない壁・高い位置
- 削ってはいけないのは下地/排気・空調/照明/搬入検討
- 部分使いで「あの席がいい」を作る
- 15万円台から部分導入できる
- 年あたりのコストで判断する
ご予算と優先順位のご相談を承っています。総額をお知らせいただければ、その範囲での配分をご提案します。
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