写真に写る店をつくる|SNS時代の素材選定
2026.11.07
飲食店の集客は、客が撮った写真から始まります。
そしてほぼすべての料理写真には、天板が背景として写り込んでいます。
この事実を、素材選定に反映しているでしょうか。この記事では、熊本で九州各地の銘木を扱う木六竹八が、「写真に写る」という観点を整理します。

料理写真の背景は、天板である
料理を撮るとき、カメラは上から、または斜め上から向けられます。
このとき画面の大半を占めるのは、器と、その下の天板です。
- 壁は写らない
- 天井も写らない
- 床も写らない
- 天板は、必ず写る
つまり、天板こそが「写真に写る内装」です。
写真映えする天板の条件
条件1|艶を抑える
最重要です。
光沢のある塗膜は、照明を反射します。すると、
- 料理を上から撮ったときに、テカリが写り込む
- 白い光の帯が入る
- 器の輪郭がぼやける
ツヤ消し(マット)のウレタン仕上げを強く推奨します。全艶消しから3分艶程度が、料理写真には最適です。
条件2|適度な色の深さ
白すぎる天板は、料理が浮きます。逆に、暗すぎると料理が沈みます。
- 明るい木肌(ヒノキ、杉の白太):白い器、青磁、ガラスが映える。ただし全体が白っぽくなりすぎることも
- 中間の色(クスノキ、栗、桜):バランスがよい
- 飴色〜濃い褐色(ケヤキ、桑、紅椨):料理の色が引き立つ。落ち着いた写真になる
使う器と料理の色から逆算してください。
条件3|木目の情報量
木目は、写真に質感の情報を与えます。
- 無地に近い素材(メラミン、塩ビシート):情報量が少なく、平板に見える
- 一枚板:木目、杢、耳。画面に情報が入る
ただし、木目が強すぎると料理と競合します。
- 料理を主役にしたい → 穏やかな木目(散孔材:桂、朴、クスノキ)
- 空間ごと見せたい → 力強い木目(環孔材:ケヤキ、クリ、センダン)
条件4|耳が写る
一枚板ならではの要素です。
天板の端(耳)が画角に入ると、「これは一枚板だ」と一目でわかります。
- 引きで撮ったときに耳が入る
- カウンターの端席は、耳が近い
耳付きを選ぶことは、写真戦略としても意味があります。

照明との関係
素材だけでは決まりません。照明が半分を決めます。
演色性(Ra)
Ra90以上を推奨します。
演色性が低い照明の下では、
- マグロが茶色く見える
- 野菜がくすむ
- 木の飴色が安っぽく見える
客のスマートフォンは、その色をそのまま撮ります。照明で損をしているのは、料理と素材の両方です。
色温度
- 2700K(電球色):木の赤みが強く出る。料理も暖かく写る
- 3000〜3500K:バランスがよい。多くの飲食店で採用
- 5000K以上(昼白色):木が白く冷たく見える。和の空間では避けたい
光の方向
- 真上からの直射は、器の影が真下に落ちて平板になる
- 斜めからの光は、立体感と陰影を生む
- 杢も、斜光で立ちます
「撮られる場所」を設計する
店内には、撮られやすい場所があります。
カウンターの端席
- 耳が近い
- 背景に厨房や酒棚が入る
- 撮影しやすい位置
窓際の席
- 自然光が入る
- 外の景色が背景になる
- 昼間の写真が美しい
大テーブル
- 複数の料理が並ぶ
- 俯瞰で撮りやすい
これらの場所に、予算を集中させる。全席でなく、「撮られる席」に投資するのが合理的です。

撮ってもらう工夫
素材を整えたら、次は動線です。
照明を撮影に配慮した明るさに
暗すぎると、スマートフォンでは撮れません。手元の照度を確認してください。
「撮影OK」を明示する
意外と、撮ってよいか迷う客がいます。
素材の説明を添える
カウンターに小さな表示を置く。
「熊本県菊池水源産 ケヤキ 樹齢約200年」
客はこれも撮ります。そして投稿に書きます。樹齢は数字なので、伝わりやすい。
英語併記
海外からの客には、樹齢の英語表記が効きます。「This tree was 200 years old.」
注意|写真のためだけに選ばない
最後に、バランスの話を。
写真映えは、判断基準の一つに過ぎません。
- 硬さ(傷への強さ)
- 手入れのしやすさ
- 寸法
- 予算
これらを満たしたうえで、写真映えを考える。順序を逆にしないでください。
たとえば「写真に映えるから」と白木を選んでも、運用体制がなければ数年で汚れた木になります。そのほうが、写真にとっても致命的です。
まとめ
- 料理写真の背景は、必ず天板
- 艶を抑える(ツヤ消し/3分艶)。テカリは写真の敵
- 色の深さは、使う器と料理から逆算する
- 木目は情報量になるが、強すぎると料理と競合する
- 耳が写ると、一枚板だと一目でわかる
- 照明はRa90以上、色温度2700〜3500K、斜光
- 撮られる席に予算を集中させる
- 素材の説明表示は、そのまま投稿される
- ただし、写真映えは判断基準の一つに過ぎない
素材と照明の組み合わせについてのご相談を承っています。照明計画がわかる図面があれば、より具体的にご提案できます。
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