施工手順と養生|引き渡しまでに天板を守る
2026.10.31
一枚板が現場に入ってから、店がオープンするまで。この期間が、実は最も危険です。
他の工事が続き、人が行き交い、資材が運び込まれる。一度ついた深い傷は、削り直すまで消えません。
この記事では、熊本で九州各地の銘木を扱う木六竹八が、施工時の守り方を整理します。

いつ入れるか|タイミングの判断
原則:できるだけ遅く
他の工事が終わってから入れるのが理想です。粉塵、塗料の飛散、資材の接触。リスクは工事が進むほど減ります。
しかし、入らないことがある
三方を壁に囲まれる納まり、天井との取り合いが厳しい場合など、壁や天井ができる前でないと搬入できないケースがあります。
このときは、早く入れて、厳重に養生するという判断になります。
判断の順序
- 搬入経路を実測し、完成後の状態で入るかを判定する
- 入るなら、仕上げ工事の後に搬入する
- 入らないなら、早期搬入+厳重養生を選択する
- どちらにするかを、施工計画に明記する
他工種との調整
一枚板より後に行われると危険な工事があります。
| 工事 | リスク |
|---|---|
| 塗装 | 飛散、溶剤の付着 |
| 左官 | 材料の飛散、アルカリによる変色 |
| 溶接・金属工事 | 火花、熱、粉塵 |
| 石・タイル | 接着剤、目地材、水 |
| 電気・設備 | 接触、工具の落下 |
| 清掃 | 薬剤による塗膜の損傷 |
とくに左官材料のアルカリには注意してください。ケヤキやクリのようにタンニンを多く含む樹種は、アルカリと反応して黒ずむことがあります。
清掃業者にも、研磨剤入りクリーナーやメラミンスポンジを使わないよう事前に伝えてください。

養生の方法
表面の保護
- やわらかい布や不織布を敷く
- その上に養生ボード(プラスチックダンボール等)を載せる
- 直接テープを貼らない。塗膜が剥がれます
テープの扱い
天板に直接、粘着テープを貼らないでください。
- 剥がすときに塗膜を持っていくことがあります
- 糊が残ります
- 日光や熱で変質します
養生材どうしをテープで留め、天板には触れないようにしてください。
通気を確保する
完全に密閉すると、湿気がこもります。
- ビニールで巻かない
- 通気性のある材料で覆う
- 長期間の養生では、ときどき開けて状態を確認する
角と耳を守る
角と耳が最も傷つきやすい部分です。
- 角当て(コーナーガード)を使う
- 耳のうねりに沿った保護材を当てる
据付時の注意
水平を出す
床は、思っているほど水平ではありません。
- 水平器で確認する
- アジャスターや調整材で補正する
- 「なんとなく置いた」状態にしない
固定は伸縮を逃がす方法で
これは何度でも申し上げます。
天板を支持にガチガチに固定すると、木が動こうとする力の逃げ場がなくなり、割れます。
- 金具は長穴(スロット)
- 駒止め・Z型金具など伸縮対応の金物を使う
- 幅方向には必ず遊びを持たせる
- ボルトを締め付けすぎない
現場では「しっかり留める」ことが良い仕事とされがちです。一枚板については逆です。図面と指示書に明記してください。
下穴を開ける
硬い広葉樹にいきなりビスを打つと、割れることがあります。必ず下穴を開けてください。
ビスの長さ
天板を貫通させると、取り返しがつきません。天板厚から5mm以上の余裕を残した長さを使ってください。

工事期間中の環境
見落とされがちですが、重要です。
- 空調が入っていない現場は、温湿度が大きく振れます
- 冬季は極端に乾燥します
- 夏季は高温多湿になります
- コンクリートや左官材料からの水分が出ます
新築・大規模改装の現場では、建物自体がまだ乾いていないことがあります。この状態で木を入れると、湿気を吸います。
可能であれば、
- 空調を早めに立ち上げる
- 除湿・加湿で環境を安定させる
- 天板の搬入を、建物が落ち着いてからにする
引き渡し前の点検
オープン前に、次を確認してください。
- 傷・打痕の有無(養生を外した直後に確認)
- 汚れ・付着物(塗料、接着剤、左官材料)
- ガタつき(四隅を押してみる)
- 水平
- 固定金物が長穴になっているか、締めすぎていないか
- 壁との隙間が確保されているか
- 天板下の通気が塞がれていないか
5〜7番は、後から直すのが大変です。引き渡し前に必ず確認してください。
スタッフへの引き継ぎ
オープン後の扱いも、この段階で共有しておきます。
- 日常は乾拭き。水拭きは固く絞って、必ず乾拭きで仕上げる
- 研磨剤入りクリーナー、メラミンスポンジは使わない
- 重曹・アルカリ性洗剤は避ける
- アルコールは布に取ってから
- 熱い器には受け台を
清掃マニュアルに明文化してください。スタッフの入れ替わりがある店舗ほど、書面が効きます。
まとめ
- 搬入は原則として仕上げ工事の後。入らないなら早期搬入+厳重養生
- 塗装・左官・溶接・清掃が後に来ないよう工程を調整する
- 左官のアルカリでタンニンを含む樹種は黒ずむことがある
- 養生は布+ボード。天板に直接テープを貼らない。密閉しない
- 固定は長穴・駒止めで伸縮を逃がす。下穴を開ける
- 工事中の温湿度変動にも注意。空調を早めに立ち上げる
- 引き渡し前に7項目を点検する
- 清掃マニュアルを明文化して引き継ぐ
施工時の注意点について、木材の側からご説明できます。施工者の方への資料が必要であればご相談ください。
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