天板厚と支点間距離|たわみを設計で抑える
2026.10.28
「この長さなら、厚みはどれくらい必要ですか」
設計者の方から最もよくいただく質問です。感覚で答えるべきではない領域なので、考え方を整理します。
この記事では、熊本で九州各地の銘木を扱う木六竹八が、たわみを左右する要素を解説します。
なお、具体的な構造判断は設計者・構造設計者の業務です。弊社は木材の販売業者であり、構造計算を行う立場にはありません。以下は検討のための考え方としてご覧ください。

効くのは「厚み」である
まず、最も重要な事実から。
板の曲げにくさは、断面二次モーメントという値で表されます。長方形断面の場合、これは幅 × 厚みの3乗 ÷ 12 に比例します。
つまり、
- 幅を2倍にすると、曲げにくさは2倍
- 厚みを2倍にすると、曲げにくさは8倍
厚みは3乗で効きます。
具体的に言うと
| 厚み | 相対的な曲げにくさ |
|---|---|
| 3cm | 1 |
| 4cm | 約2.4倍 |
| 5cm | 約4.6倍 |
| 6cm | 約8倍 |
| 7cm | 約12.7倍 |
厚み3cmを5cmにするだけで、たわみにくさは4倍以上になります。
「厚くすると重くなるし高くなる」というのは事実ですが、たわみ対策としては、厚みを増すのが圧倒的に効率的です。
支点間距離も強く効く
一方、支点と支点のあいだの距離(スパン)も大きく効きます。
均等に荷重がかかる場合、たわみはスパンの4乗に比例するとされます。
| スパン | 相対的なたわみ |
|---|---|
| 1.0m | 1 |
| 1.5m | 約5倍 |
| 2.0m | 16倍 |
| 2.5m | 約39倍 |
スパンを1.5倍にすると、たわみは約5倍。これは想像以上の差です。
だから、中間支持は非常に有効
長さ3mのカウンターを、両端だけで支えるのと、中央にもう一点支持を入れるのとでは、たわみは劇的に変わります。
厚みを増やせない事情があるなら、支点を増やす。これが定石です。

樹種によっても違う
木材の曲げにくさには、ヤング係数という材料固有の値が関わります。
一般に、密度の高い樹種ほどヤング係数も高い傾向があります。
| 樹種 | 気乾比重の目安 | 傾向 |
|---|---|---|
| 桐 | 0.2〜0.3 | たわみやすい |
| 杉 | 0.4前後 | たわみやすい |
| ヒノキ | 0.4〜0.45 | 中間 |
| クスノキ | 0.5前後 | 中間 |
| 栗 | 0.55前後 | たわみにくい |
| ケヤキ | 0.6〜0.7 | たわみにくい |
同じ寸法でも、杉とケヤキではたわみ方が違います。杉で長尺のカウンターを計画する場合は、厚みまたは支点で補ってください。
なお、木材は天然素材であり、同じ樹種でも個体差があります。数値はあくまで傾向としてお考えください。
許容たわみをどう考えるか
どこまでのたわみなら許容できるのか。
建築の構造部材には基準がありますが、家具としてのカウンターには明確な法定基準はありません。実務的には、
- 目視で気にならないこと
- 使用上の支障がないこと(水がたまる、器が滑るなど)
- 長期的に戻らない変形(クリープ)が進行しないこと
が判断基準になります。
一般論として、スパンに対して1/300程度のたわみであれば、目視ではほとんど気づかれないとされます。スパン1.5mなら5mm程度です。
ただし、木材は長期間の荷重で徐々にたわみが進行する(クリープ)性質があります。初期のたわみが小さくても、数年後に増えることがあります。余裕を持った設計をおすすめします。

実務的な目安
明確な基準がない領域なので、私たちが経験的にお伝えしている目安を挙げます。
| カウンター長さ | 厚みの目安 | 支持の考え方 |
|---|---|---|
| 〜1.5m | 4cm以上 | 両端支持で可 |
| 1.5〜2.5m | 5cm以上 | 両端+必要に応じ中間 |
| 2.5〜4m | 6cm以上 | 中間支持を推奨 |
| 4m以上 | 6cm以上 | 継ぎ+複数支持 |
これはあくまで目安です。樹種、幅、想定荷重、片持ちの有無によって変わります。条件が厳しい計画では、設計者に構造的な検討を依頼してください。
荷重の想定を忘れない
たわみ計算で見落とされがちなのが、荷重の想定です。
カウンターにかかるのは、天板の自重だけではありません。
- 食器、グラス、ボトル
- 調理機器、レジ、PC
- 客が肘や体重をかける
- スタッフが身を乗り出す
- 清掃時に人が乗ることもある
とくに最後の点。「人が乗る可能性」を見込んでおくと安全側になります。実際、電球交換や清掃でカウンターに上がることは起こります。
片持ちは別の話
客席側に天板を張り出させる片持ち(カンチレバー)は、両端支持とは計算が異なります。
- 先端に荷重がかかると、支持部に大きな曲げが集中する
- たわみは張り出し長さの4乗に比例する(先端集中荷重なら3乗)
大きな張り出しを計画する場合は、必ず構造的に検討してください。「見た目は軽やかだが、肘をつくと沈む」カウンターは設計の失敗です。
決める順序
- カウンターの長さと配置を決める
- 支持できる位置を洗い出す(客席の足元、動線、下地の位置)
- スパンを算出する
- 樹種を仮決めする
- 厚みを決める(スパンと樹種から)
- 必要なら中間支持を追加する
- その寸法の材が存在するかを確認する
7番目が重要です。厚み7cm、幅80cm、長さ4mという材が、いつでもあるわけではありません。早い段階でご相談ください。
まとめ
- たわみは厚みの3乗に反比例する。厚みを増すのが最も効率的
- スパンの4乗に比例する。中間支持は劇的に効く
- 樹種でも差が出る。杉は厚みか支点で補う
- 長期のクリープを見込み、余裕を持たせる
- 荷重には人が乗る可能性も含める
- 片持ちは別途の検討が必要
- 厚みが決まったら、その材が存在するか確認する
寸法と樹種の組み合わせについて、木材の側からご相談に応じます。ご検討中のスパンと樹種をお知らせください。
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