飲食店の内装制限と木材|設計前に押さえる建築基準法の基本
2026.10.24
店舗で木を使おうとすると、必ず出てくるのが内装制限という言葉です。
「飲食店では木が使えない」と誤解されていることもあれば、逆に「家具だから何でも大丈夫」と流されていることもあります。どちらも正確ではありません。
この記事では、熊本で九州各地の銘木を扱う木六竹八が、設計前に押さえておきたい枠組みを整理します。
はじめにお断りします。弊社は木材の販売業者であり、法的な判断を行う立場にはありません。この記事は一般的な枠組みの説明にとどまります。個別の可否は、必ず所轄の特定行政庁・消防署、および設計者にご確認ください。

内装制限とは何か
内装制限は、建築基準法とその施行令に基づく規定です。
火災が起きたとき、内装材が燃え広がることで避難が困難になる。これを防ぐために、一定の建築物の一定の部分について、仕上げ材の燃えにくさを求めるというのが趣旨です。
対象となる「部位」
ここが最も重要なポイントです。
内装制限の対象は、一般に「壁及び天井(天井のない場合は屋根)の室内に面する部分」とされています。
つまり、
- 壁 → 対象
- 天井 → 対象
- 床 → 対象外
床が対象外であるという点は、条文の文言上はっきりしています。ここは押さえておいてください。
では、家具はどうか
条文が求めているのは建築物の仕上げです。
したがって、独立して置かれる可動の家具は、内装制限の対象外と解されるのが一般的です。テーブル、椅子、置き家具などがこれにあたります。
一方で、建築物に固定され、壁の仕上げと一体に見える造作になると、話が変わることがあります。
- 壁面に張り付けた木の腰壁
- 壁と一体に造作された棚
- 壁面を覆う木の仕上げ
これらは「壁の室内に面する部分」と判断されうる領域です。
カウンターがどちらに当たるかは、納まりによって判断が分かれます。この論点は別の記事で詳しく扱います。

どんな建築物が対象になるのか
内装制限がかかるかどうかは、単純ではありません。次のような要素の組み合わせで決まります。
| 判断要素 | 内容 |
|---|---|
| 用途 | 飲食店、物販店、ホテル、病院などの特殊建築物か |
| 規模 | 階の床面積、建築物全体の延べ面積 |
| 階数 | 地階か、何階にあるか |
| 構造 | 耐火建築物か、準耐火建築物か、その他か |
| 室の性質 | 火気使用室か、無窓居室か |
飲食店であれば必ず対象、というわけでもなければ、小規模なら必ず対象外、というわけでもありません。
この判定は設計者の業務です。テナント区画の面積、入居するビルの構造、階数を伝えたうえで、設計者に確認してください。
求められる仕上げの区分
対象となった場合、求められるのは次のいずれかの性能です。燃えにくい順に、
- 不燃材料
- 準不燃材料
- 難燃材料
これらは建築基準法施行令で定義されており、加熱に対して一定時間、燃焼せず、有害な変形をせず、有害な煙やガスを発生しないことが求められます。
どの区分が要求されるかは、建築物の条件によって変わります。
火気使用室は別の扱い
厨房のように火を使う設備を設けた室は、火気使用室として別途の規定がかかります。
うなぎ屋の焼き場、天ぷら店の揚げ場、鉄板焼きの鉄板。これらを持つ店舗では、この論点を必ず確認してください。
設計者に伝えるべき情報
相談をスムーズにするために、次を整理しておいてください。
- 入居する建築物の構造(耐火/準耐火/その他)
- 建築物全体の延べ面積と階数
- テナント区画の床面積
- 何階に入るか(地階を含む)
- 用途(飲食店、物販、宿泊など)
- 火を使う設備の有無と位置
- 窓の有無と大きさ(無窓居室の判定に関わります)

木を使いたいときの現実的な進め方
1. まず設計者に判定してもらう
内装制限がかかるのか、かかるとしてどの区分が求められるのか。ここが出発点です。
2. 対象外の部位に木を使う
床は対象外です。家具として独立させれば、対象外と解されるのが一般的です。
一枚板のカウンターやテーブルが店舗で使われているのは、この構造によるところが大きいといえます。
3. 対象となる部位には認定材を使う
壁や天井に木を使いたい場合は、不燃木材・準不燃木材という選択肢があります。ただし、これらには制約があります(別の記事で扱います)。
4. 早い段階で相談する
内装制限の判定が後から変わると、素材計画が根本から崩れます。基本設計の段階で確認してください。
よくある誤解
「飲食店では木が使えない」
正確ではありません。制限がかかるのは一定の条件下の壁と天井であり、床や家具は一般に対象外です。
「家具だから何でも自由」
これも危険です。壁と一体化した造作は判断が分かれます。納まりによります。
「木材はすべて燃えやすいから不可」
厚みのある木材は、表面が炭化することで内部への延焼が遅れるという性質を持ちます。ただし、それが法令上の区分を満たすかどうかは別の問題です。認定の有無で判断されます。
まとめ
- 内装制限は建築基準法に基づく規定
- 対象は壁及び天井の室内に面する部分。床は対象外
- 可動の家具は一般に対象外と解される
- 壁と一体化した造作は判断が分かれる
- 対象かどうかは用途・規模・階数・構造・室の性質で決まる
- 火気使用室は別途の扱い
- 判定は設計者の業務。基本設計の段階で確認する
繰り返しになりますが、弊社は法的な判断を行う立場にはありません。個別の可否は、必ず所轄の特定行政庁・消防署、および設計者にご確認ください。そのうえで、木材としての仕様についてはお力になれます。
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