ホテルのフロントカウンター|ブランドを語る素材
2026.10.23
ホテルにおいて、全ての客が必ず立ち止まる場所はどこか。
フロントカウンターです。チェックイン、チェックアウト、問い合わせ。滞在中に何度も訪れ、そのたびに手を置きます。
にもかかわらず、多くのホテルでフロントカウンターは「機能」として設計されています。ここを素材で語れる場に変えると、何が起こるか。
この記事では、熊本で九州各地の銘木を扱う木六竹八が、フロントカウンターの素材について整理します。

フロントカウンターが担っているもの
第一印象
客がホテルの質を判断する最初の接点です。ここでの印象が、その後の客室や食事の評価にまで影響します。
ブランドの宣言
何を使っているかは、そのホテルが何を大切にしているかの表明です。
- 地域の木を使う → 土地に根ざしていることの表明
- 樹齢数百年の材を使う → 時間への敬意の表明
- 均質な人工素材を使う → 効率への合理的判断
どれが正しいということではなく、選択そのものがメッセージになるということです。
写真に写る
チェックイン時、客はロビーとフロントを撮影します。その写真がSNSに流れます。既製品のカウンターは撮られません。
素材で語るとは、どういうことか
具体的には、スタッフが説明できる状態をつくるということです。
「このカウンターは、熊本の菊池水源で育った樹齢200年のケヤキです」
この一文が言えるかどうかで、同じ材でも意味が変わります。
さらに効果的なのは、小さな表示を添えることです。樹種、樹齢、産地。数行の説明で、客は自分で読み、写真を撮り、話題にします。
インバウンドに最も効く
海外からの客にとって、無垢の一枚板は説明が要らない価値です。
木が貴重であること、大きな木が少ないこと、時間をかけて乾かすこと。これらは言語を超えて伝わります。
樹齢を伝えるのが最も直接的です。「This tree was 200 years old.」という一文で、その場の意味が変わります。

寸法設計
高さ
| 対応形式 | 天板上面の高さ |
|---|---|
| 立位対応(スタッフ・客とも立つ) | 100〜110cm |
| 座位対応(客が椅子に座る) | 70〜75cm |
| 車椅子対応部 | 70〜75cm、膝が入る空間を確保 |
バリアフリーの観点から、一部を低くする設計を検討してください。車椅子の方が使える高さは、一般に70〜75cm程度で、天板下に膝が入る空間(高さ65cm以上、奥行45cm以上が一つの目安)が必要とされます。
なお、建築物のバリアフリー対応については法令や条例、自治体の基準が関わります。具体的な要求水準は、設計者および所轄の窓口にご確認ください。弊社は木材の販売業者であり、法的な判断を行う立場にはありません。
長さ
フロント業務の動線から決めます。スタッフ人数、PC台数、プリンタ、決済端末の配置を先に確定してください。
弊社の取り扱いは最長4m程度です。それを超える場合は、複数枚を並べるか、継ぐという判断になります。
奥行
客側の作業領域(書類記入、荷物の仮置き)と、スタッフ側の業務領域の合計。70〜90cm程度になることが多いですが、業務内容によります。
業務機器との取り合い
フロントカウンターは、機器が集中する場所です。設計段階で確定しておくべきことがあります。
配線
- PC、プリンタ、決済端末、電話の電源と通信線
- 天板に配線孔を開けるか、天板下から回すか
- 一度開けた孔は塞げません。機器配置を確定してから加工してください
機器の埋め込み
決済端末やサインパッドを天板に埋め込む場合、切り欠き加工が必要になります。
- 開口の四隅はRを取る(応力集中による割れを防ぐ)
- 枠と木のあいだにクリアランスを確保し、弾性シーリングで処理する
- 木は湿度で幅方向に伸び縮みします。剛性の高い枠で拘束すると割れの原因になります
加工後は返品できません
加工をご依頼いただいた商品は、返品をお受けできません。機器の実物寸法を確認したうえで、開口位置を確定してください。カタログ寸法と実物が異なることがあります。

樹種と仕上げ
ホテルは24時間稼働し、不特定多数が使う施設です。業務用途としての判断が優先されます。
- 樹種:硬く傷に強いケヤキ、クリ。幅が必要ならクスノキ、紅椨
- 仕上げ:ツヤ消しのウレタン。指紋が目立ちにくく、清掃に耐える
- オイル仕上げは推奨しません。清掃スタッフが多数関わる環境で、塗り直しと輪染み対策の徹底は現実的でないためです
清掃マニュアルに入れること
- 乾拭きが基本。水拭きは固く絞って、必ず乾拭きで仕上げる
- 研磨剤入りクリーナー、メラミンスポンジは使わない(塗膜を削ります)
- 重曹・アルカリ性洗剤は避ける(タンニンを含む樹種は黒ずむことがあります)
- アルコールは布に取ってから使う
スタッフの入れ替わりがある施設ほど、明文化しておく価値があります。
材の手配タイミング
長尺・幅広・節が少ない。フロントカウンターの要求は厳しくなりがちです。
一枚板は一点ものです。図面が固まってから探しはじめると、条件に合う材が残っていないということが起こります。
必要な長さと奥行が見えた段階でご相談ください。図面確定前で構いません。
まとめ
- フロントは全ての客が必ず立ち止まる場所
- 素材の選択そのものがブランドの宣言になる
- スタッフが語れる状態と小さな表示が効く
- 樹齢を伝えることがインバウンドに最も効く
- 高さは立位100〜110cm、座位70〜75cm。バリアフリー対応部の検討を
- 配線孔・機器の埋め込みは機器確定後に。加工後は返品不可
- 業務用途は硬い樹種+ツヤ消しウレタン
- 長尺材は早く押さえる
ホテル・宿泊施設の案件のご相談を承っています。フロント業務の内容と必要寸法をお知らせください。
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