飲食店のカウンターに一枚板を|業態別の選び方と失敗しない進め方
2026.10.19
飲食店の内装で、もっとも記憶に残るのはカウンターです。お客様が座り、手を置き、目の前にあり続ける。その一点に何を使うかで、店の印象と単価は変わります。
この記事は、店舗のオーナー・設計者・インテリアデザイナーの方に向けて、熊本で九州各地の銘木を扱う木六竹八が、一枚板カウンターの進め方を整理したものです。

なぜ一枚板なのか|投資として見る
経年で価値が下がらない
塩ビシートやメラミン化粧板のカウンターは、数年で劣化が目立ちはじめます。一枚板は逆で、使い込むほど色が深まります。
さらに、表面が傷んでも削り直して仕上げ直せます。表層0.2〜0.6mmの突板ではこれができません。一回の削り直しで減る厚みは1〜3mm程度。厚み50mmの天板なら、計算上は十数回削れます。
10年、20年という単位で店を続ける前提なら、年あたりのコストは決して高くありません。
写真に写る
いまの集客は写真から始まります。一枚板の木目と耳のうねりは、既製品のカウンター材では出せません。
話のきっかけになる
「この木は何ですか」と聞かれる。樹種、樹齢、産地の話ができる。カウンター越しの会話が生まれること自体が、飲食店にとっての価値です。
業態別|どう選ぶか
| 業態 | 向く樹種 | 仕上げ | 特に注意する点 |
|---|---|---|---|
| 寿司 | ヒノキ(白木) | 白木、または薄い保護 | 白木維持の手間。水と魚の脂 |
| 日本料理・割烹 | ケヤキ、ヒノキ、クスノキ | ウレタン(ツヤ消し) | 器を置く音、盛り付けの見え方 |
| うなぎ・焼き物 | ケヤキ、クリ | ウレタン | 油煙、輻射熱 |
| 天ぷら | ヒノキ、ケヤキ | ウレタン | 油はね、熱 |
| 蕎麦・うどん | 杉、クリ、ケヤキ | オイルまたはウレタン | 汁の色素、回転率 |
| 鉄板焼き・焼肉 | ケヤキ、クリ | ウレタン | 熱源との距離 |
| バー・ラウンジ | ケヤキ、クスノキ、紅椨 | ウレタン(艶あり可) | 照明の当て方、結露 |
| カフェ | 杉、ヒノキ、桜 | ウレタン | 回転率と傷の許容 |
業務用途では、原則としてウレタン仕上げをおすすめしています。オイル仕上げは質感が優れますが、水・油・熱への弱さと、定期的な塗り直しの手間が、営業の現実と噛み合わないことが多いためです。
例外は寿司店の白木で、これは伝統と美意識が優先される世界です。

樹種選びの基準は「硬さ」
住宅と店舗で、いちばん違うのがここです。
住宅なら、杉や桐のやわらかさを「味」として受け入れられます。しかし店舗では、不特定多数が毎日触れます。傷の入り方がまったく違います。
- 硬く傷に強い:ケヤキ、クリ
- 中間:クスノキ、桜、朴
- やわらかい:杉、ヒノキ、桐
ケヤキは店舗カウンターの第一候補です。臼や和太鼓の胴に使われてきた硬さと粘り強さは、業務用途でそのまま効きます。
一方で、杉やヒノキの持つ和の空気は代えがたいものがあります。その場合は傷が入る前提で、削り直しを織り込んだ運用にするか、ウレタンで保護するかを、最初に決めておいてください。
長さをどう確保するか
店舗カウンターで最初に問題になるのが長さです。
弊社では最長4m程度までの大型商品をお取り扱いしています。それを超える場合は、複数枚を並べる、あるいは継ぐという判断になります。
ここで重要なのは、一枚板は一点ものだということです。図面が固まってから探しはじめると、条件に合う材が残っていないということが起こります。
長さと幅の要求が厳しいほど、早く材を押さえてください。
法規で確認しておくこと
設計者の方はご存じのとおりですが、念のため整理します。
飲食店は用途・規模・階によって、建築基準法の内装制限の対象になることがあります。ただし内装制限は一般に、壁および天井の室内に面する部分を対象とするものとされ、床や可動の家具はその対象外と解されるのが通例です。
したがって、独立した造作家具としてのカウンターは対象外と考えられることが多い一方、壁と一体化した仕上げに近い納まりになると判断が分かれることがあります。
また、厨房などの火気使用室は別途の扱いになります。
弊社は木材の販売業者であり、法的な判断を行う立場にはありません。個別の可否は、必ず所轄の特定行政庁・消防署、および設計者にご確認ください。

スケジュールから逆算する
ここが、店舗案件でもっとも失敗の多いところです。
| 工程 | 目安 |
|---|---|
| 材の選定・ご相談 | 早いほどよい |
| 加工(カット・仕上げ) | 最短2週間〜2か月程度 |
| 配送・納品 | サイズと配送先により個別調整 |
内装工事のスケジュールから逆算すると、オープンの3か月前には材を決めておきたいところです。
なお、加工をご依頼いただいた商品は返品をお受けできません。加工内容は事前によくご確認ください。
進め方|5つのステップ
- 用途・業態・席数を決める
- 必要な長さと奥行を出す(客席の幅、付け台の有無、厨房との関係)
- 候補となる材を押さえる(図面の確定前でも構いません)
- 納まり・支持方法を設計に落とす
- 加工内容を確定し、発注する
3番を後回しにすると、「図面はできたが、その寸法の材がない」という事態になります。順番を入れ替えないでください。
納品について
大型商品は、お受け取り希望日を確認したうえで手配しています。
熊本県および九州圏内であれば、加工した商品を店舗へ納品できる場合があります。搬入経路(入口の幅、曲がり角、階段、エレベーター)を事前にご相談ください。
予算を抑える方法
全長すべてを一枚板にするのが難しければ、見せ場だけに使うという手があります。
- レジ周り、入口正面だけ
- 窓際の一席だけ
- カウンターの客側だけ一枚板、作業側は別材
弊社の取り扱いには15万円台の材もあります。部分使いなら、現実的な予算で導入できます。
まとめ
- 一枚板は削り直せるため、長期で見れば費用対効果が高い
- 業務用途は原則ウレタン仕上げ。例外は寿司店の白木
- 樹種は硬さで選ぶ。第一候補はケヤキ
- 弊社は最長4m程度まで対応。長尺ほど早く材を押さえる
- 法規の判断は所轄行政庁・消防署・設計者へ
- オープン3か月前には材を決めたい
店舗案件のご相談を承っています。業態・席数・希望寸法・オープン予定日をお知らせいただければ、条件に合う材と現実的なスケジュールをご案内します。図面が固まる前の段階でのご相談も歓迎です。