消防法と木製家具|防炎物品の対象範囲を正しく知る
2026.10.25
建築基準法の内装制限と並んで、店舗設計で確認が必要なのが消防法です。
とくに「防炎」という言葉は、カーテンやじゅうたんの話として耳にすることが多い。では、木のカウンターやテーブルはどうなのか。
この記事では、熊本で九州各地の銘木を扱う木六竹八が、防炎規制の枠組みを整理します。
はじめにお断りします。弊社は木材の販売業者であり、法的な判断を行う立場にはありません。個別の可否は、必ず所轄消防署および設計者にご確認ください。

防炎規制とは
消防法には、特定の建築物で使用する特定の物品について、燃えにくい性能(防炎性能)を求める規定があります。
対象となる建築物は、一般に次のようなものです。
- 高層建築物
- 地下街
- 特定防火対象物(劇場、映画館、キャバレー、飲食店、百貨店、旅館・ホテル、病院、福祉施設など)
飲食店も旅館・ホテルも、この特定防火対象物に含まれます。したがって、防炎規制は無関係ではありません。
「防炎対象物品」に何が含まれるか
ここが本題です。規制がかかるのは、建築物内のすべての物ではなく、政令で定められた「防炎対象物品」に限られます。
一般に、次のようなものが対象とされています。
- どん帳、その他舞台において使用する幕
- カーテン
- 布製のブラインド
- 暗幕
- じゅうたん等(人工芝、ござなどを含む)
- 展示用の合板
- 舞台において使用する大道具用の合板
- 工事用シート
繊維製品と、展示・舞台で使われる合板が中心です。
木製家具はどう扱われるか
上記の列挙を見ていただくとわかるとおり、テーブル、カウンター、椅子といった一般の木製家具は、防炎対象物品として列挙されていません。
したがって、木製家具は防炎規制の対象外と解されるのが一般的です。
ただし、次の点に注意してください。
「展示用の合板」との区別
対象に含まれる「展示用の合板」は、展示会場などで用いられる合板を指すとされます。飲食店のカウンターがこれに当たると解される場面は、通常想定されません。
とはいえ、用途や設置形態によっては確認が必要な場合があります。
条例による上乗せの可能性
各自治体には火災予防条例があり、消防法の規定に加えて独自の定めを置いていることがあります。
運用は自治体によって異なります。開業予定地の所轄消防署に、必ず事前相談してください。

建築基準法との違いを整理する
混同されやすいので、並べて整理します。
| 項目 | 建築基準法(内装制限) | 消防法(防炎規制) |
|---|---|---|
| 何を対象とするか | 建築物の仕上げ(壁・天井) | 特定の物品(カーテン、じゅうたん等) |
| 床は | 対象外 | じゅうたん等は対象 |
| 木製家具は | 一般に対象外と解される | 一般に対象外と解される |
| 判断する窓口 | 特定行政庁(建築主事等) | 所轄消防署 |
二つの法律は、対象としているものが違います。「内装制限は大丈夫だから消防も大丈夫」とは言えませんし、その逆も成り立ちません。両方を確認してください。
実務上の確認手順
- 設計者に建築基準法上の判定をしてもらう(内装制限の該当性と区分)
- 所轄消防署に事前相談する(防炎規制、消防用設備、厨房設備の要件)
- 自治体の火災予防条例の有無と内容を確認する
- 消防用設備(自動火災報知設備、消火器等)の要件を確認する
- そのうえで、内装・家具の仕様を確定する
開業スケジュールを考えると、これは基本設計の段階で済ませておきたい工程です。
防炎以外に消防が関わること
防炎規制だけでなく、店舗では次も消防の所管です。
- 厨房設備の位置と離隔距離
- 火を使用する設備の防火上の措置
- 自動消火装置の要否
- 消防用設備の設置
- 避難経路の確保
とくに厨房設備の離隔距離は、カウンターと熱源の関係に直接影響します。うなぎ屋の焼き場、天ぷら店の揚げ場、鉄板焼きの鉄板をカウンターに組み込む場合は、必ず確認してください。

私たちができること・できないこと
できること
- 材の樹種・寸法・厚み・乾燥年数・仕上げなどの仕様をお伝えする
- ご希望寸法への加工(樹種・形状・厚みにより可否が変わります)
- 納まりに関する木材側からの助言
できないこと
- 法令適合の判断
- 防炎性能や不燃性能の保証
- 認定材の提供(弊社は無垢の銘木を扱っており、不燃認定材は扱っておりません)
この線引きは明確にしておきます。
よくある誤解
「飲食店では防炎の家具しか使えない」
正確ではありません。防炎規制の対象は政令で列挙された物品であり、一般の木製家具は含まれないとされます。
「防炎ラベルがない木は使えない」
防炎ラベルは、防炎対象物品が防炎性能を有することを示すものです。対象外の物品にラベルは不要です。
「消防に聞けば建築の判断もわかる」
所管が違います。建築基準法は特定行政庁、消防法は消防署。両方に確認してください。
まとめ
- 防炎規制は消防法に基づく。飲食店・旅館も対象建築物に含まれる
- ただし規制されるのは政令で列挙された物品(カーテン、じゅうたん等)
- 一般の木製家具は対象外と解されるのが通例
- 自治体の火災予防条例による上乗せの可能性がある
- 建築基準法(内装制限)と消防法は対象が違う。両方確認する
- 厨房設備の離隔距離は消防の所管。カウンター設計に直結する
- 確認は基本設計の段階で
材の仕様については、木材の側からご相談に応じます。設計者の方からのお問い合わせも歓迎です。
あわせて読みたい:飲食店の内装制限と木材|設計前に押さえる建築基準法の基本