天ぷら店のカウンター|油と熱に向き合う素材選び
2026.10.21
天ぷら店のカウンターは、客の目の前で油が跳ねる環境にあります。
しかも多くの店が、揚げ場を客席から見せる設計を取ります。ライブ感が商品の一部だからです。その結果、カウンターは飲食店のなかでも過酷な条件に置かれます。
この記事では、熊本で九州各地の銘木を扱う木六竹八が、天ぷら店のカウンター材について整理します。

天ぷら店特有の3条件
1. 油の飛散
揚げ油は微細な粒子として飛びます。目に見えない量でも、毎日積み重なれば木肌に入ります。
無塗装や白木では、数年で取り返しがつかなくなることがあります。
2. 熱
揚げ場からの輻射熱と、鍋からの上昇気流。カウンターの揚げ場側は、局所的に乾燥が進みます。
木は一部分だけが乾くと、そこに力が集中し、割れや反りの原因になります。
3. 蒸気
食材の水分が蒸気となって上がります。熱と乾燥だけでなく、湿度の急激な変動も加わります。
乾く/湿るを繰り返す環境は、木にとって最も厳しい条件です。
素材の判断
樹種
硬く、木肌が緻密な広葉樹を選んでください。
- ケヤキ:第一候補。硬く、油煙が染み込みにくく、経年で飴色へ深まる
- クリ:タンニンを多く含み水湿に強い。木目がはっきり出る
やわらかく色の淡い樹種(杉、桐)は、油染みが目立ちやすく、跡も残りやすい。避けたほうが無難です。
ヒノキの白木という伝統
一方で、天ぷらの名店にはヒノキの白木カウンターが少なくありません。清潔さを可視化するという寿司と同じ思想です。
これを選ぶ場合、定期的に削り直して白さを戻す運用が前提になります。
- 営業後に必ず拭き上げる
- 数年に一度、表面を削る
- 削り直しを見込んだ厚みを確保しておく
この工程を運用に組み込めるかどうか。それが白木を選べるかの分かれ目です。
仕上げ
白木を取らないのであれば、ツヤ消しのウレタン仕上げを強くおすすめします。
- 油が塗膜の上に乗るため、拭き取れる
- 水・熱に強い
- 日常の手入れが拭くだけで済む
光沢のある仕上げは、油膜が光って見えます。必ずツヤ消しを指定してください。

設計側でできること
素材だけでは守りきれません。
揚げ場との距離
カウンターの揚げ場側端部から、鍋までの距離を確保してください。紙を敷く天ぷら店の作法は、油を受けるためでもあります。
局所排気
揚げ場の直上に確実な排気を設け、油煙が客席側に流れない気流をつくります。これは内装の保護だけでなく、客の衣服への付着を防ぐ意味もあります。
端部を別素材にする
揚げ場に最も近い部分だけ、石・金属・耐熱材にするという設計があります。一枚板を守りつつ、機能を確保できます。
上下・表裏の環境を揃える
天板の上面だけが熱と油にさらされ、下面が閉じられていると、上下で乾き方が変わり反りが出ます。天板下の通気を設計で確保してください。
日常の運用
内装を長持ちさせるのは、日々の扱いです。
- 営業後、必ず拭き上げる。油は当日に落とすのが最も楽
- 中性洗剤を薄めて使い、水拭き、乾拭きの順で仕上げる
- 研磨剤入りクリーナー、メラミンスポンジは使わない(塗膜を削ります)
- 重曹・アルカリ性洗剤は避ける。ケヤキやクリのようにタンニンを多く含む樹種は、アルカリと反応して黒ずむことがあります
- アルコールは布に取ってから
この5点は、スタッフ全員が共有できる形で明文化しておいてください。

法規の確認
揚げ場は火を使う設備を持つため、火気使用室として扱われる可能性があります。火気使用室には建築基準法上の内装制限がかかる場合があります。
一方で、内装制限は一般に壁および天井の室内に面する部分を対象とするものとされ、独立した造作家具はその対象外と解されるのが通例です。ただし壁と一体化した納まりでは判断が分かれることがあります。
弊社は木材の販売業者であり、法的な判断を行う立場にはありません。個別の可否は、必ず所轄の特定行政庁・消防署、および設計者にご確認ください。
寸法の考え方
| 項目 | 目安 |
|---|---|
| 客席1人あたりの幅 | 55〜65cm |
| 客側の天板奥行 | 35〜45cm |
| カウンター高さ | 椅子座面高+差尺25〜30cm |
| 天板の厚み | 5cm以上(白木なら削り直し分を加算) |
揚げ場の高さ、油鍋の位置、客の目線の高さ。これらは実際の所作から決めてください。
まとめ
- 天ぷら店は油の飛散・熱・蒸気という3条件下にある
- 樹種は硬く緻密なケヤキ・クリ
- 仕上げはツヤ消しウレタン。白木を選ぶなら削り直しの運用が前提
- 局所排気と揚げ場からの距離という設計側の手当てが不可欠
- 揚げ場に最も近い部分だけ別素材にするのも有効
- 重曹・アルカリ性洗剤は使わない
- 法規の判断は所轄行政庁・消防署・設計者へ
天ぷら店のカウンターのご相談を承っています。揚げ場との位置関係がわかる図面があれば、より具体的にご提案できます。
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