うなぎ屋の内装と一枚板|焼き場の熱・煙・油にどう備えるか
2026.10.19
うなぎ屋の内装は、飲食店のなかでも条件が特殊です。
備長炭の輻射熱。立ちのぼる煙。脂。そして多くの店では、焼き場が客席から見える。この環境に木を置くとき、何を考えるべきか。
この記事では、熊本で九州各地の銘木を扱う木六竹八が、うなぎ屋の一枚板について整理します。

うなぎ屋の内装が直面する3つの条件
1. 輻射熱
炭火は強い輻射熱を出します。焼き場に近い木材は、局所的に乾燥が進みます。
木は湿度に応じて伸び縮みします。一部分だけが継続的に乾けば、そこに力が集中し、割れや反りの原因になります。
2. 油煙
うなぎの脂は、煙となって空気中を漂い、内装に付着します。時間とともに、木肌は黒ずんでいきます。
3. 湿度と温度の変動
焼き場のある空間は、営業中と閉店後で温湿度が大きく変わります。この変動幅が、木にとっては負担になります。
だから、対策は3方向から
対策1|樹種を硬く、緻密なものにする
ケヤキ、クリが第一候補です。
- 硬く、傷が入りにくい
- 木肌が緻密で、油煙が染み込みにくい
- 経年で色が深まるため、多少の着色が「味」に転化しやすい
逆に、杉やヒノキのような軟らかく色の淡い樹種は、うなぎ屋では扱いが難しくなります。白っぽい木肌に油煙が乗ると、汚れとして見えやすいためです。
もっとも、それをあえて受け入れ、数十年かけて飴色に燻された内装を財産にしている老舗もあります。どちらの道を選ぶかは、店の考え方次第です。
対策2|仕上げはウレタン一択に近い
業務用途のなかでも、うなぎ屋はウレタン仕上げを強くおすすめする業態です。
- 油煙が塗膜の上に乗るため、拭き取れる
- 水・油・熱に強い
- 日常の手入れが拭くだけで済む
オイル仕上げや白木は、油煙をそのまま吸い込みます。数年で取り返しがつかなくなることがあります。
光沢はツヤ消し(マット)を指定してください。艶があると、油膜が光って見えます。
対策3|焼き場との距離と排気で守る
素材だけでは解決しません。設計側の手当てが必要です。
- 局所排気を焼き場の直上に設け、油煙を客席側に流さない
- 焼き場とカウンターのあいだに適切な距離を取る
- 気流を設計し、煙が木に当たり続けないようにする
- カウンター天板の下面・裏面も同じ環境になるよう、極端に閉じない
天板の上下・表裏で環境の差を作らない。これは木材を扱ううえでの原則です。上面だけが熱と煙にさらされる状態が続けば、反りが出ます。

焼き場が見える設計の場合
うなぎ屋では、焼き場を見せることが演出になる店が多くあります。
この場合、カウンターは焼き場に近づきます。だからこそ、次を検討してください。
- 焼き場側の端部を別素材にする(石、金属、耐熱材)
- カウンターと焼き場のあいだに立ち上がりを設ける
- 天板の熱源に近い部分の厚みを確保する(薄いと反りやすい)
- 熱の当たる面に直射しない角度をつくる
法規の確認
うなぎ屋は炭火を扱うため、厨房や焼き場が火気使用室として扱われる可能性があります。火気使用室には、建築基準法上の内装制限がかかる場合があります。
一方で、内装制限は一般に壁および天井の室内に面する部分を対象とするものとされ、独立した造作家具はその対象外と解されるのが通例です。
ただし、壁と一体化した納まりになると判断が分かれることがあります。
弊社は木材の販売業者であり、法的な判断を行う立場にはありません。個別の可否は、必ず所轄の特定行政庁・消防署、および設計者にご確認ください。
日常の運用ルール
内装を長持ちさせるのは、結局のところ日々の扱いです。スタッフ間で共有しておきたいことを挙げます。
- 営業後、必ず拭き上げる。油煙は付着した当日に落とすのが最も楽
- 固く絞った布で拭き、乾いた布で水気を取る
- 研磨剤入りクリーナー、メラミンスポンジは使わない(塗膜を削ります)
- 重曹・アルカリ性洗剤は避ける。ケヤキなどタンニンを多く含む樹種は、アルカリと反応して黒ずむことがあります
- 熱い器は必ず受け台の上に
経年を味方にするという考え方
最後に、うなぎ屋ならではの話をします。
老舗のうなぎ屋を訪れると、何十年もの煙で飴色になった柱や梁が、その店の格を語っていることがあります。新品では出せない色です。
一枚板のカウンターも、同じ道を通ります。ケヤキは飴色へ、クリは渋みのある茶褐色へ。そこに油煙の記憶が重なる。
これを「汚れ」と見るか「歴史」と見るか。その判断を最初に決めておくと、樹種と仕上げの選択がぶれません。
汚れとして管理したいなら、ウレタンで守り、拭き上げる。歴史として蓄積させたいなら、硬い広葉樹を選び、時間に委ねる。

まとめ
- うなぎ屋の内装は輻射熱・油煙・温湿度変動という3条件下にある
- 樹種は硬く緻密なケヤキ・クリが向く
- 仕上げはツヤ消しのウレタンを強く推奨
- 局所排気と焼き場との距離という設計側の手当てが不可欠
- 天板の上下・表裏で環境差を作らない
- 法規の判断は所轄行政庁・消防署・設計者へ
- 経年を汚れとするか歴史とするかを先に決める
うなぎ屋・焼き物の店舗案件のご相談を承っています。焼き場との位置関係がわかる図面があれば、より具体的にご提案できます。
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