電源・配線の処理|カウンター内に機器を仕込む
2026.10.29
店舗のカウンターには、必ず機器が集まります。
レジ、決済端末、PC、照明、冷蔵ショーケース、コーヒーマシン。電源と配線をどう処理するかは、設計段階で決めておかなければならない事項です。
この記事では、熊本で九州各地の銘木を扱う木六竹八が、木の天板に配線を通すときの考え方を整理します。

大原則|一度開けた孔は塞げない
最初に、最も重要なことをお伝えします。
加工をご依頼いただいた商品は、返品をお受けできません。そして、一度開けた配線孔は塞げません。
木の埋め木で塞ぐことは技術的には可能ですが、跡は残ります。一枚板の面に残る痕跡は、目立ちます。
したがって、
- 機器の配置を確定してから、孔の位置を決める
- カタログ寸法ではなく、実物の寸法で確認する
- 「将来使うかもしれない」で予備の孔を開けない
迷ったら、開けない。後から開けることはできますが、塞ぐことはできません。
配線の通し方|3つの方式
1. 配線孔(グロメット)を開ける
天板に丸孔を開け、樹脂や金属のグロメット(リング)を入れる方法です。
- 長所:確実。ケーブルの出し入れが容易
- 短所:天板の面に孔が見える
- 径:50〜80mm程度が一般的。通すケーブルの本数と太さから決める
2. 天板の背面に切り欠きを設ける
天板の壁側の端に、半円状または矩形の欠き込みを入れる方法。
- 長所:正面から見えにくい
- 短所:壁との隙間が必要。奥行が減る
3. 天板下から回す
天板には手を加えず、天板の下でケーブルを処理する方法。
- 長所:天板に傷をつけない。一枚板の面を守れる
- 短所:機器の配置が制約される。ケーブルトレーが必要
- 一枚板では、この方式を第一に検討することをおすすめします

一枚板では「開けない設計」を優先する
一枚板は、面の連続性そのものが価値です。木目が端から端まで通っていることが、突板や集成材との違いです。
そこに孔を開けるのは、その価値を削ることでもあります。
開けずに済ませる方法
- 機器を天板の端に寄せ、背面から配線する
- 天板下にケーブルトレーを設け、そこに集約する
- 電源を天板ではなく、下部の幕板や側面に設ける
- コードレス機器を選定する
「本当に天板に孔が必要か」を一度問い直してください。下から回せるなら、そのほうが良い。
それでも開ける場合の設計
位置
- 機器の実物寸法と設置位置から決める
- 節や割れの位置を避ける(強度が落ちます)
- 支持位置との関係を確認する(支持の真上は避けたい)
- 客の視線から見えにくい位置を選ぶ
径と形状
- 通すケーブルのコネクタが通る径を確保する(ケーブル自体は細くても、プラグは太い)
- 矩形の開口は、四隅にRを取る。角からの割れを防ぎます
強度への影響
孔を開ければ、その断面は減ります。
- 幅方向の中央に大きな孔を開けると、その位置での曲げ強度が落ちます
- 複数の孔を近接させない
- 孔の周囲に十分な残り幅を確保する
長尺・薄物の天板で大きな開口を計画する場合は、設計者に構造的な確認を依頼してください。

コンセントを天板に埋め込む場合
近年、卓上コンセントや埋込型の電源ユニットを天板に組み込むケースが増えています。
木の伸縮という問題
ここで、一枚板特有の注意点があります。
剛性の高い金属の枠を天板にはめ込むと、木が動こうとしても枠が動きません。その力の逃げ場がなくなり、割れます。
対策は、
- 枠と木のあいだにクリアランス(隙間)を確保する
- 隙間は弾性シーリングで処理する
- 枠を固定する場合は長穴を使い、動きを許す
- 開口の四隅にRを取る
「きっちり納める」のが正しくない場面です。わざと遊びを残してください。
水まわりとの関係
飲食店では、水がこぼれます。天板の電源ユニットは、防滴性能のあるものを選定してください。電気設備の仕様は、電気工事業者・設計者にご確認ください。
天板下の処理
見た目に出ないところですが、重要です。
- ケーブルトレーを天板裏に設け、配線を整理する
- 天板に直接ステープルやビスでケーブルを留めない(天板を傷めます)
- トレーの固定も、天板の伸縮を拘束しない方法で
通気を塞がない
配線ボックスやトレーで天板下を密閉すると、上下で乾き方が変わり反りが出ます。
天板下の通気経路を確保してください。これは木材を扱ううえでの原則です。
施工順序
配線の処理は、施工順序に影響します。
- 機器の配置と型番を確定する
- 電気設備の位置を確定する(コンセント、LAN、給排水)
- 天板の加工内容を確定する
- 下地・支持構造を施工する
- 配線を先行して通す
- 天板を据え付ける
- 機器を設置する
5番と6番の順序に注意してください。天板を先に固定すると、ケーブルが通せなくなることがあります。
図面に書くこと
- 配線孔の位置(基準からの寸法)と径
- グロメットの仕様
- 埋込機器の型番と開口寸法
- 開口部のクリアランスとシーリング指示
- 四隅のR指定
- ケーブルトレーの位置
- 天板下の通気確保
加工は元に戻せません。図面で確定させてください。
まとめ
- 一度開けた孔は塞げない。迷ったら開けない
- 一枚板では天板下から回す設計を第一に検討する
- 開ける場合は、機器の実物寸法で位置を確定する
- 開口の四隅にはRを取る。強度と割れの対策
- 埋込機器はクリアランス+弾性シーリング+長穴で伸縮を逃がす
- 天板に直接ケーブルを留めない。トレーを使う
- 天板下の通気を塞がない
- 配線は天板据付の前に通す
配線を含む加工のご相談を承っています。機器の型番と図面をお知らせいただければ、加工の可否を含めてご相談に応じます。
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