移転・改装で一枚板を活かす
2026.11.08
店を移す。あるいは、店を作り変える。
このとき、既存の一枚板をどうするか。そして、新しく何に投資するか。
この記事では、熊本で九州各地の銘木を扱う木六竹八が、移転・改装における一枚板の扱いを整理します。

一枚板は、持っていける
まず、前提を確認します。
独立した家具として設置されていれば、移転時に持ち出せます。
- 壁・床・天井に固定されていない
- 脚や下地に載せ、ボルトで留めてあるだけ
- 取り外しても建物を傷めない
この条件を満たしていれば、原状回復で撤去する対象になりません。
一枚板は、削り直しながら数十年使える素材です。店舗の寿命より、材の寿命のほうが長いことがあります。
持ち出すための確認
1. 取り付け方法を確認する
- どう固定されているか
- 分解できるか
- 取り付け時の記録(図面・写真)はあるか
数年後に外すとき、どう留めたかを覚えている人はいません。記録があれば作業が早く、安全です。
2. 搬出経路を確認する
搬入できたのだから搬出もできる、とは限りません。
- 内装が変わっている
- 什器が増えている
- 搬入時より通路が狭くなっていることがある
搬入時の経路と寸法の記録が役立ちます。
3. 重量を把握する
奥行70cm×長さ4m×厚7cmのケヤキで、約120〜140kg。搬出には3〜4人以上が必要です。
4. 契約を確認する
原状回復の範囲と、造作の扱いについて、契約書を確認してください。
判断に迷う場合は、弁護士等の専門家および貸主にご確認ください。
保管という工程
新店舗が決まるまで保管する場合、扱いを間違えると反ります。
- 立てかけない(自重でたわみます)
- 床に直置きしない(湿気を吸います)
- ビニールで密閉しない(湿気がこもります)
- 平らな台の上に、同じ厚みの桟を等間隔に入れて水平に置く
- 通気性のある布で養生する
- 保管場所は室内。直射日光を避ける
十分に乾燥した材であれば、正しく保管していれば数か月から一年程度は問題ありません。

削り直しという再生
移転・改装は、削り直しの好機です。
営業を止めている期間があるため、通常なら難しい工程が実行できます。
削り直しでできること
- 表面の傷・凹みを取る
- 輪染み・水シミを消す
- 色あせをリセットする(新しい面が出ます)
- 塗装をやり直す(仕上げの変更も可能)
一回の削り直しで減る厚みは1〜3mm程度。厚み50mmの天板なら、計算上は十数回削れます。
仕上げを変えられる
たとえば、
- オイル仕上げ → ウレタン仕上げ(手入れを楽にする)
- 艶あり → ツヤ消し(写真映えを改善する)
店のコンセプトが変わるなら、仕上げも変えられます。
削り直しをご検討の場合は、材の状態を拝見したうえでご相談に応じます。
新店での再設置
脚・支持は作り直しになることが多い
- 床の水平が違う
- 高さの要求が変わる
- 支持位置が変わる
天板は再利用でき、脚部は新調する。これが一般的です。
寸法が合わない場合
新店舗のレイアウトに、既存の天板が合わないこともあります。
- 短くカットする(元には戻せません)
- 別の用途に転用する(カウンター → テーブル、など)
- 一部を切り出して使う
大きくすることはできませんが、小さくすることはできます。慎重に判断してください。

改装で「一点だけ変える」
移転ではなく、既存店の改装の場合。
全体を変えない
一点だけ格を上げる。投資効率としては、これが最も高いことがあります。
- カウンターだけ入れ替える
- 個室のひとつだけ設えを変える
- 入口・待合に一点置く
- レジまわりを変える
値上げと同時に行う
改装は、価格を見直す機会でもあります。
「店が変わったから、価格も変わった」という文脈が立ちます。小手先ではなく、実際に体験が変わっているなら、筋が通ります。
営業を止められる期間から逆算する
改装では、休業期間が最大の制約です。
| 工程 | 目安 |
|---|---|
| 材の選定・相談 | 早いほどよい |
| 加工 | 最短2週間〜2か月程度 |
| 搬入・据付 | 1日〜 |
加工期間中は営業できます。休業が必要なのは、撤去・搬入・据付の期間です。
材を先に手配し、加工を終わらせてから休業に入る。この順序なら、休業を最小化できます。
周年という機会
5周年、10周年、20周年。
節目には、変化の理由が立ちます。
- 常連客への告知がしやすい
- 「◯周年を機に」という文脈
- 素材に投資する正当な理由
記念として、樹齢の長い材を迎える。店の歴史と、木の歴史が重なります。
まとめ
- 独立家具として設置していれば、移転時に持ち出せる
- 持ち出すには取り付け記録・搬出経路・重量・契約の確認を
- 保管は立てかけず、水平に桟を入れて、室内で
- 移転・改装は削り直しの好機。仕上げの変更も可能
- 新店では脚部は作り直し、天板は再利用が一般的
- 改装では「一点だけ変える」が投資効率が高い
- 加工期間中は営業できる。休業は撤去〜据付だけ
- 周年は、素材に投資する理由が立つ機会
移転・改装のご相談を承っています。既存材の状態と、新店の計画をお知らせください。
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