インバウンドと和の素材|海外客に伝わるもの
2026.11.08
海外からの客が求めているのは、「日本でしか得られない体験」です。
料理はもちろんですが、それを取り囲む空間も、体験の一部です。
では、和の素材は何をどこまで伝えられるのか。この記事では、熊本で九州各地の銘木を扱う木六竹八が整理します。

言語を超えて伝わるもの
説明がなくても伝わる要素があります。
1. 本物であること
無垢の一枚板は、写真や印刷物では代替できない情報量を持ちます。
- 木目の連続
- 耳のうねり
- 小口の厚み
- 触れたときの質感
「これは本物だ」という判断は、言語を介しません。
2. 手仕事の痕跡
面取りの丸み、仕上げの手触り、チギリ(割れを止める蝶々形の木片)。
人の手が入っていることは、見ればわかります。
3. 経年
使い込まれた飴色。これは新品では作れません。時間が経っていることは、伝わります。
言葉が必要なもの|ただし数字は強い
一方、説明がなければ伝わらないこともあります。
樹齢は、最も強い情報
「This tree was 200 years old.」
この一文が、最も効きます。理由は明快で、数字は翻訳が要らないからです。
- 200年前が何時代か
- その頃、自国では何が起きていたか
客は勝手に計算し、勝手に驚きます。
産地
「This wood is from Kumamoto, Kyushu.」
その土地に来た意味が、素材を通じて伝わります。地産の食材と同じ構造です。
乾燥年数
「Dried naturally for 20 years.」
「20年待った」という事実は、効率を重視する文化圏ほど驚かれます。
伐採の経緯
弊社が扱う材には、背景を語れるものがあります。
樹齢1400年の杉は、熊本県八代の坂本村で千四百年立ち続けた木です。天然記念物として守られていましたが、老朽化により倒木の危険が生じ、安全を優先して文化財保護法に基づき登録を解除したうえで伐採されました。伐採後、三十年の自然乾燥を経ています。
「守られていた木が、安全のためにやむを得ず伐られ、三十年かけて乾かされた」
この物語は、文化を超えて理解されます。

英語表記の作り方
最小構成
カウンターの端、またはメニューの片隅に、次の3点があれば十分です。
Keyaki (Japanese Zelkova)
From Kikuchi, Kumamoto, Kyushu
Approx. 200 years old
日本語と英語を併記してください。
加えるなら
- 乾燥年数(Air-dried for 20 years)
- 一枚板であること(Single slab, no joints)
- 伐採の経緯(来歴のある材の場合)
注意
事実でないことを書かないでください。
- 樹齢は「Approx.(約)」を付ける
- 由来が不確かなものは書かない
- 確認できないことは言わない
盛った話は、いずれ矛盾します。
写真を通じた拡散
海外からの客は、投稿する割合が高い傾向があります。
そして、説明表示も一緒に撮影されます。
- 素材の表示があると、投稿に情報が付く
- 「200 years old」という数字が、キャプションに書かれる
- その投稿が、次の客に届く
表示は、広告として機能します。
撮られる条件
- ツヤ消し仕上げ(テカリが写らない)
- 手元の照度が十分(暗いと撮れない)
- 演色性Ra90以上(色が正確に写る)
- 表示が読める位置にある

スタッフが語れるようにする
表示だけでなく、口頭で伝えられると効果が倍増します。
一文を用意する
“This counter is a single slab of Japanese Zelkova, about 200 years old, from Kumamoto.”
完璧な英語である必要はありません。樹種・樹齢・産地が伝われば十分です。
全スタッフが言えるようにする
新人研修に入れてください。覚えるのは一文だけです。
質問への備え
よく聞かれることへの答えを、用意しておく。
- 何の木か(樹種)
- どこから来たのか(産地)
- 何年前の木か(樹齢)
- 一枚の板なのか(Yes, single slab)
業態別の効き方
| 業態 | 効果 |
|---|---|
| 寿司・天ぷら | 白木への関心は高い。清潔さの思想が伝わる |
| 日本料理・料亭 | 空間全体が体験。素材の格が効く |
| 旅館 | 滞在時間が長く、伝える機会が多い |
| ホテル | フロントで全員が接触する |
| バー | 会話の時間がある |
旅館とホテルは、とくに効果が大きい。滞在中に何度も目にし、触れるためです。
注意点
過度な演出は逆効果
作り物の「和」は見抜かれます。
海外からの客は、多くの場合よく調べています。本物と作り物の区別はつきます。
本物を使い、事実を伝える。それ以上の演出は不要です。
日本の客にも同じことが起きる
海外向けと考えがちですが、国内の客にも同じ効果があります。
樹齢、産地、来歴。これらは日本人にとっても新鮮な情報です。両方に効く施策だと考えてください。
まとめ
- 言語を超えて伝わるのは本物であること・手仕事・経年
- 言葉が必要な情報のうち、樹齢という数字が最も強い
- 英語表記は樹種・産地・樹齢の3点で十分
- 事実でないことは書かない
- 表示は撮影され、投稿され、広告として機能する
- スタッフが一文で言えるようにする
- 旅館・ホテルはとくに効果が大きい
- 作り物の和は見抜かれる。本物を使い、事実を伝える
材の樹齢・産地・来歴をお伝えできます。英語表記に必要な情報もご提供しますので、お申し付けください。
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